短編
※…背後注意
◎…その他

3度の飯よりお前の…


暦上、春。

しかし実際は冬だ。
外での仕事を終えて帰ってきたシエルは、すぐに暖炉の前の椅子に腰をかける。






「本日は、ご苦労様でした。」

「…あぁ。しかし寒いな。」

「坊ちゃん、風邪をひかれましたか?」

「…いや、そうではない。」







(この僕がそう簡単に風邪なんかひいてられるか。)
そう思った。







「そうですね。もし坊ちゃんが風邪をひかれたら、私の責任ですし。それに仕事がたくさん残っています…坊ちゃん、寒かったのではありませんか?」

「寒いとさっきから言っているだろう!!」

「とても汗をかかれていますから…」




シエルの額にはかなりの汗が流れていた。
顔も赤い。







「…坊ちゃん、熱がありますね。」

「うるさい!!気のせいだ!!早く書類に目を…」

「通さなくて大丈夫です。今日は大人しくお休みください。」

「…今日はリジーだって来るんだぞ!!」








今日の朝に連絡が入り、エリザベスが来ることを知らされていた。
(僕が風邪をひいて寝込んでいるなんて知ったら、治るまで此処にとどまるだろうな…)







「…エリザベス様がいらっしゃって風邪がうつると大変ですから、電話をしておきます。」

「そうしてくれ。後日、会うよう伝えといてくれ。」

「分かりました。」











(何でこんな時に風邪をひくんだ!!…今まで風邪なんて1、2回ぐらいしか…)







「セバスチャン、水。」

「どうぞ。」






ジュー






「体調のほうはいかがですか?」

「食欲がない…くらいか。」

「デザートなどなら食べられますか?」

「ああ。」







シエルは即答だった。
そして、次の日の夕食まで同じことを繰り返していた。






「ときに坊ちゃん、いつまで待てば食欲が出てくるんでしょうか…?」

「さあな。」

「もう一生、デザートをお作りしませんよ?」

「…3食の飯より、お前のスイーツが好きなだけだ」






言ったせいなのか、風邪のせいなのか、シエルの顔は真っ赤だった。







「私も、坊ちゃんが1番ですよ。」

















=END=
2010.12.31


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