憂鬱と虹
「泊まってけばいいのに」
新幹線ホーム。
売店で買ってきた、飲み物とお菓子の入った袋を渡すと。
「アホゆえ。今日かてズル休みしてんねん。明日もやったら、おかんに殺されてまうわ」
苦笑いを浮かべながら袋を受け取る。
「ま、仕方ねーか。じゃ、楽しみはまた今度な」
「楽しみてなんやねん」
響くベルの音。
「ほな、またな」
「ああ。また、な」
ゆっくりと閉まる扉。
向こう側で、ひらり舞う手。
その袖口で。
控えめに光るブレス。
「嫌がってたけど、やっぱ似合うじゃん」
そっと、自分の左手首を押さえる。
平次はタンザナイト。
自分はエメラルド。
それぞれの瞳と同じ、石の輝くブレスが光る。
「さーて。明日の言い訳考えよー」
大きく伸びをして。
ホームから降りるエスカレーターへと向った。
最悪から、最高に変わった。
一日のお話。
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