憂鬱と虹

「……つーかさ」

 渡されたプレゼント。
 箱を開けて出てきたそれに顔が引き攣る。

「商品券って……お前は親か」

 いっそハンカチ1枚とかの方が嬉しかった、と思うのは。
 入っている金額的に贅沢なんだろうか。

「何が欲しいとかわからんし。好きなモン買うてや」

 コーヒー片手にひらり手を舞わす。
 その姿は。
 まるで飲み屋のお姉さんに渡してご満悦のオヤジ。

 ホント。
 ロマンチストなんだか、そうじゃないんだか。
 平次の頭の中はさっぱり分からない。

 一つ、瞼を閉じて深呼吸。
 開いた瞳で、平次を捉える。

「……何でも、好きなものでいいんだな?」

 真っ直ぐ自分を向く瞳に。
 気付いて合わせて。

「ええけど……?」

 ごくり。
 コーヒーを飲み込む音と同時。
 に、と笑って。

「じゃ、これでペアアクセ買うから。プレゼントなんだから当然、平次も付けろよ」
「はぁ?!」

 言って立ち上がると。
 慌ててる平次の腕を掴んで。

「っつー、事だから。ほら、立つ!買いに行くぞ」
「いや、ちょ……待てや」

 ぐいぐい引いて、無理矢理に立たせると。
 そのまま、半ば引き摺るようにして玄関へと向う。

「プレゼントにやったモンで自分にプレゼントされるとか。意味分からんし」
「好きなモン買っていいっつったじゃねーか」
「自分の為だけに使えや」
「だから、オレが幸せ感じる為に使うんだろ」
「屁理屈屋っ」

 その後もブツブツ文句を言う平次を連れて。
 抜けた玄関の向こう。
 泣き出しそうな程曇っていた空は。
 今は眩しい位の青空だった。

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