憂鬱と虹

「日付変わったと同時にメールとか電話とか……まさかそないに乙女な事望んでるとか思わへんやんけ」
「乙女で悪かったな」

 電話の時。
 無言になってた間、それに気がついたものの。
 どうしたもんかと悩んでいるうちにオレが怒って電話を切った、と平次は言った。

「つーか。気付いたなら、その時点でおめでとうとか言えばいいだろ」

 そうすれば、オレがあんな思いをする事も無く。
 不機嫌なオレに、平次が困ることも無かった筈で。
 そこで悩んだ意味が分からない。

「せやかて……」

 視線を外し。
 指先でぽりぽりと頬を掻く姿は。
 何故か少し照れているようにも見える。

「電話越しやのうて、直接言いたかってんから……しゃーないやん」
「え」

 どっちが乙女だよ。
 言ってる本人より、聞いてるコッチが恥ずかしい。

 暫しの間、無言で見つめ合う二人。
 その後で。

「誕生日おめでとさん、黒羽」

 バックから取り出したプレゼントを差し出して。
 笑う瞳。
 優しい声を向ける平次を。
 これでもか、ってぐらいに抱き締めて。

「さんきゅ」

 そっと額に口付けた。

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