Smile for you.

 いくつかのアトラクションに乗って、ゲームをやって。
 時間が過ぎてく程に少しずつ。
 不満だった平次の表情が、普段のそれに戻っていって。

「快斗。次アレ乗ろ、アレ」

 言って。
 無邪気に笑顔を向けてくれた時には。
 思わず、感動で泣きそうになった。

 ……うん。
 オレ達、カップルだよね……。



 デートって言っても。
 別に手を繋いだり、腕を組んで歩く訳じゃないし。
 お揃いのグッズを選んではしゃいだり。
 そんな事一切なくて。
 ただ、並んで歩いて。
 時間を共有しあうだけ。

「ちょっと休憩しよか」

 それでも、やっぱ恋人らしい事はしたい気持ちもたまにはあって。
 カップルらしい場所でデートする。
 それが自分は楽しかったり、平次とその場に居る事が幸せだったりするんだけど。
 平次は、それをどう感じているんだろ。

 飲み物を買うと、ワゴンに走って行った背中を見ながら。
 今朝の、不機嫌を隠してないよううな、不満そうな顔を思い出して。
 思わず下を向いて、小さな溜息が漏れた。
 その、落とした視線の先に。

「何溜息吐いてんねん」

 声と共に飛び込んで来たカップには。
 バレンタイン限定のチョコレートアイスが鎮座する。
 同じくチョコレートで作った、キャラクターとかハートとかがいっぱい。

「……」

 両手で受け取って、顔を上げると。
 コーラを飲んでる平次が映る。
 合った視線を外して。

「当日はガッコあるし、女子に混ざって買うとかムリやし」

 言うその表情は、今朝のそれと凄く近くて。
 やっぱ不機嫌そうに見えるんだけど。

「チョコ欲しかったんやろ?」

 実は不機嫌なんじゃなくて、照れ臭いだけ……?

「……なんやねん。不満なんかい」

 戻って合う瞳に。
 少し困ったような色が浮かんで。
 それが確信に変わった時には。
 本当はその場で思いっ切り抱き締めてやりたくなったけど。

「ぜんっぜん!」

 その衝動をぐっとこらえて。
 とびっきりの笑顔を向けるだけに止めたら。

「そか。なら良かった」

 言って見せてくれた微笑は優しくて。
 口に運んだアイスと同じ位に甘かった。

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