Smile for you.

 チョコレートが欲しいな、なんて言ってみても。
 買ったらいいじゃないか、と言われるような気がして。
 悲しくなりそうだったから。
 美味そうだな、って。
 ショップを通り過ぎる時に呟いてみた。

 ……オレって、こんな小心者だったっけ……。





 2月と言えば。
 ショップにも街にもハートが溢れて。
 シングルは心浮き立ち、カップルはより距離が縮まる。
 恋の一大イベントは一種の祭。

「見事にカップルだらけやな」

 祭りムードはここ、トロピカルランドも同様で。
 辺りはカップル率が半端なく高い。

「オレ達も一応カップルなんだけど」
「で?最初はどれ?」
「……」

 次のデートはトロピカルランドで。
 言った時から、凄く嫌そうなのは分かってたけど。
 これは相当機嫌がよろしくない?
 オレのセリフは完全スルーでマップを開く。

「平次は何に乗りたい?」

 横から覗き込んだオレに、ちらり横目で視線を向けると。
 マップをぽい、と渡して。

「オレは何でもええ。快斗の好きなモンに乗ろ」

 言いながら、さっさと歩き出して先にゆく。

「ちょっと。待てよ、おいっ」

 その後を追って、もう一度覗き込んだ顔は。
 やっぱり凄く、不満そうだった。

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