Heartful Voice

 疑った事は、正直一度も無い。
 怪盗キッドに興味が無かった、と言うのもある。
 だが、同じ街に住んでいない。
 だから疑う機会が無かった、と言うものある。

 前は絶対に捕まえて、牢獄にぶち込んでやると言っていた工藤。
 その工藤の目的が、捕まえる事から、いつか頭脳勝負を楽しむ事に変わっていた。
 そこに腑に落ちない何かを感じていた。
 それも事実。



「え?あ、そか。ええで、別に。その日に拘っとるワケちゃうし」

 百貨店で受けた電話に。
 本心とは全く違う言葉を返した。

「ゴメンな。25日は朝一で会いに行くから!ホント!!」
「んー……ああ。したら早起きして待っとくわ」
「ゴメン!!じゃ」

 通話の切れた携帯を暫く眺めて。
 しまいながら、逆の手にある紙袋に視線を移すと。

「……そか。イヴは会われへんのか」

 声に出して呟いて。
 瞬間。
 気付いた自分の想いに戸惑った。

「あ……オレ……――」

 少し、くらりと眩暈に似たモノを感じて。
 通路脇のベンチに腰を下ろすと、一つ深く息を吐く。

「めっちゃショック受けとるやんか。アホやなー……」

 仰いだ視線の先では、クリスマスカラーのオーナメントがキラキラ揺れて。
 そこに黒羽の顔を重ねて浮かべたら。
 また一つ、小さく溜息が漏れてきた。

「子供達を楽しませに行くんや。ええ事やないか。立派やで」

 自分を納得させようと呟いた言葉は。
 逆に心をざわつかせるだけで。
 そんな自分に、更にイライラが込み上げてくる。

「オレ、元からこないに傲慢やったかなー……――。……元からか」

 両手で顔を覆って。
 事実にがっくりと頭を垂れた。

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