Heartful Voice

 イヴは福祉施設でマジックショーに呼ばれている。
 だから会えない。
 クリスマスは絶対会いに行くから待ってて。

 そう言った。
 その言葉に嘘は無い。

 だが。

「マジックショーは夕方まで。来ようと思えば来れる。ガッコ休んでまで会いに来るよなお前

が来ない。その理由は一つ」

 目の前の相手。
 その表情、瞳の色の変化。
 全てを見逃すまいと、まるで射るように見据える。

 自分が現れた時。
 ほんの一瞬だけだったが、その瞳が驚きの色に揺れた。
 それは見逃していない。

「何の事かな?」

 だがすぐに戻された色。

 その視線に負ける事無く見返す瞳。
 変らぬ表情。

「Tears of Mary。その手にしとるパライバトルマリン。イヴ限定展示やからな。しかも、今

回が国外持ち出し展示ラスト。今日を逃したら、二度とお目に掛かれんっちゅうワケや。ま、

会おう思ったらいつでも会える、オレよか優先して当然」

 言いながら近付き、あと一歩の所で止まって肩を竦めて見せる。
 その様を見つめる瞳には何の色も見えない。

「そやろ?黒羽」

 呼び慣れた名前を。
 いつもと違う姿の彼にぶつけた。

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