Yesterday,today,forever
遠距離は、会いたい時に会えない。
けどそれは、近距離だって変らない。
「……例えば。1年に3日しか会えんでも平気か、てさっきゆうてたな」
向かいの椅子に座り、冷蔵庫から取ってきたコーラを開けながら。
平次が静かに話し出す。
「答えは、『平気』や」
コーラを一口飲んで。
「何でやと思う?」
向けてくるのは真摯な瞳。
「……分かんねえ。オレはそんなの耐えられねえし」
一緒に持ってきて、目の前に置いてくれてたコーラを取って。
プルタブを開けると。
乾いた音が、静かな室内に響いた。
「その3日会えるだけでも幸せや、思える位。黒羽ん事が好きや、っちゅう事やで?その3日で、残りの362日耐えられてまう位」
傾けて、口内に流れ込んできたコーラを。
一気に噴きそうになって、何とか堪えて。
けど、やっぱ変なトコに流れちまって、思いっ切り咽て咳き込んだら。
「……何してんねん。大丈夫か?あーあー、コレ染みになんで……」
言いながら背中を叩いてくれて。
ついでに服にちょっと零れた事に気付いて、そこを心配してくれて。
しゃがみ込んでシャツを掴んだ、その顔の位置が。
「……なんや?」
オレの視線に気付いて、瞳だけで見上げるその仕草が。
危険な妄想をしろ、と言わんばかりなのは……多分、オレの気のせいなんだけど。
なんだけど。
「平次……ここ、ドコ?」
「どこって……ホテルの寝室……」
視線を部屋に移した、その瞬間。
堪え切れなくて、ぎゅっと頭を抱え込むように抱き締めて。
「く、黒羽……苦し……っ」
「……っかい……」
「……え?」
囁くぐらいに小さく。
「もっかい……言ってくんね?」
腕を解いて、そのまま両手で平次の顔を包み込み。
ゆっくり、瞳を自分に向かせる。
「もっぺんゆったら……もう不安になったりせえへん、ゆうなら。ゆうたってもええけど」
「うん、無理。できねー約束はしない。けど聞きたい」
「なに我儘ゆうとんねん」
「オレ元々我儘だし。あ、ついでに。黒羽じゃなくて、快斗っつってくれたら死ぬほど嬉しい」
平次から漏れるのは苦笑。
でも、呆れてるとかそんなんじゃない。
表情より多くを語る、瞳で分かる。
「死なれても困るのやけど……」
「じゃ、死んでも死なねーから」
「どっちやねん」
笑いながら。
頬にあるオレの手に、平次のそれがそっと重ねて。
ゆっくりと、一つ瞬きと深呼吸。
「好きやで、快斗」
紡ぎ出される声は、オルゴールの音色のように優しくて。
「例え離れとっても。いつでも、心は一緒に居るから」
向き合う瞳は、チョコレートのように甘い。
「そんだけは、忘れんといてや」
全てが心地良いから虜になって。
他の誰にも渡したくない。
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