Yesterday,today,forever
「待てって……言ってんだろっ!!」
追い付いて、肩に掛けた鞄のベルトを掴む腕を取る。
勢いで半分振り返った瞳は、変わらず悲しそうなままで。
自分がそうさせた。
その罪悪感に、ズキズキと心が痛んだ。
「……放せや……」
「離さない」
ただならぬ雰囲気に、道行く人々が振り返るけど。
そんなのに構ってる場合じゃない。
「オレがその程度って何だよ。……って、オレもあんな事言って悪かったけど……。……オレが平次を分かってねーって、そう思うんなら。どうして分からせようとしないんだ。なんで、それは違うって言ってくれないんだよっ」
今更名前で呼ぶのが照れくさくて、ずっと苗字でしか呼んでくれない事も。
遠距離だから気持ちをセーブして、会いたいなんて言わないって事も。
平次の思いは全部知ってるし、分かってるつもりだ。
けど確証はどこにも無いから。
どうしたって不安は付き纏ってくるし、それを消したいと思っちまうのはしょうがねーだろ?
多分、今度はオレが泣くんじゃねーかって顔してんだろな、って分かるけど。
ホント、どーしようもねー情けない男だなって思うけど。
それがオレだから仕方ない。
平次に出逢った。
好きになった、その瞬間から。
プライドなんて、どっかに置いて来ちまったから。
「……どうしたって不安になるんだ。分かっていても、確かめたくなっちまう。……その程度なんて、言うなよ……」
俯いて。
掴んでいた手も、滑り落ちるように放してしまったオレの。
頭に、ぽんと平次の手乗って。
「……分かった。分かったから……取り敢えず場所変えよか。……目立ち過ぎや」
上げた瞳に映るのは。
悲しさは消えて、代わりに本気で困った苦笑を浮かべる平次。
ちらり、視線を周りに向けると。
確かに目立ち過ぎているのがよく分かる程の視線が向けられていた。
「……もう帰るとか言わねえ?」
視線を平次に戻して、呟くように訊くと。
「ゆわへん」
言って、瞳が笑ってくれたから。
つられてオレも、笑顔になった。
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