Anniversary

「……このメッセージ。そのまま返してやりたいくらいだよ……」
「あ?なんて?」

 太陽はとうに沈んで。
 辺りはすっかり闇に沈んだ。
 二人を邪魔する人影ももう居ない。

 差し出された薔薇を、抓む指ごとそっと掴んで。

「英語じゃさっぱり分かんねーから、ちゃんと日本語で言ってくれる?っつったんだよ」

 間近で瞳を捉え、悪戯っ子の様に微笑むと。
 元から大きな瞳が、更に大きく見開いて。

「あ、アホ言えっ。お前が分からんワケあるかっ」

 言って、逃げ腰になるのを許さずに。
 逃げられないよう、もう片腕でしっかり抱き寄せた耳元へ。

「聞かせてよ」

 囁くついで。
 そっと唇を縁へと触れさせて。

「感動で泣かせるんだろ?」

 もう一度合わせた瞳は、少し睨むように快斗を見るも。
 その色は、すぐに溜息と共に消えて。
 
「オレが……いっちゃん……いっちゃん……」
「いっちゃん、何」

 呟く毎に小さくなる声と、動揺に揺れる瞳が面白くて。
 快斗の瞳が楽し気に輝く。

「……あ……いしとる快斗」

 居た堪れなそうに逸れる平次の視線。
 戻させるように、抱き寄せていた腕を解いて顎を引く。 

「はい、そこ。変な間あけない」

 戻した視線に、一瞬抗議の色が混じるも。
 そっと顎の手を退けさせながら、やれやれと細く息を吐くと。
 一度閉じられ、開いた瞳は常の色。

「お前がオレにとって……どんだけの意味があって、どんだけいつも幸せをくれとるのかを……。お前が知っとってくれたらええな、って」

 空いている手を、快斗の頬に当て。
 暗さで、普段より大きく見える瞳に映る星。
 その輝きに、酔ってしまいたくなりながら。

「オレにとっての平次も同じだって……知っててくれてる?」

 訊いて、ゆっくりと快斗が顔を近づけて。
 唇が、間もなく触れる、とその時に。

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