Anniversary

 あれは、去年。
 秋の終わり。

「黒羽、お前誕生日いつや」

 ショーケースに並んだ、バースデーケーキを眺めて。
 ぼそり、平次が言った。

「何だよ急に。6月だけど」
「なんや、もう今年は終わってもうたんか……。6月のいつ?」
「21日」

 平次が眺めているのは、明らかに子供向け。
 イチゴケーキにヒヨコが乗った、可愛らしいケーキ。

「……てか何?誕生日まだだったら、それに快斗君お誕生日おめでとう、とか描いてくれるつもりだった?」

 言いながら、思わず漏れる苦笑い。
 平次がくれるのなら何でも嬉しいけれど、自分がそんなイメージに見られているのならちょっとツライ。

「んなワケあるかい。迎えるのが7歳ならこんでええとして、17にコレはないやろ」

 その言葉に、少しだけほっとした。

「6月21日か……。よっしゃ、覚えた。来年は絶対お祝いしたるからな。感動して泣くなよ」
「あぁ?……うん、まぁ……。じゃ、楽しみにしてるよ」
「おう」





 確かに、そんな話をした。
 けれども、あんな小さな約束。
 ずっと覚えていてくれただなんて。

 言われるまで忘れてしまっていた自分と、大事に思っていてくれていた平次と。
 その違いに、ちくり快斗の心が痛んだ。

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