MilkChocolate

平次は照れ屋だ。
それは知ってる。
知ってるんだけど……。

「なぁ、平次」
「んー?」
「オレの事スキ?」

暫しの間。
向けられる視線。

アホ。
うん、今、絶対そう言った。

そしてまた、本へと戻される視線。
答えは無い。

「たまには言葉も必要だと思うんですけど?」

照れ屋ったって、少しは努力してくれてもいいと思うんだよね。
オレの方がダントツで好きなのは知ってんだけど。
それでもさ。

「言葉とか、解り易いモンに頼ったらアカンで、黒羽。好きなら、見えへんトコまで感じ取らな」

好きだから、言葉も欲しくなるんじゃねーかよ。
自分の想いの方が強いって知ってっから、確認したくなるんだ。
何でわかんねーかな……。

思って、やるせなさに溜息が出た。

「ほれ。コレやるから元気出し」

落としていた視線の先に紅い包み紙。
手に取って、視線を上げる。
笑みを浮かべた平次が見えた。

「チョコはどーせ、女子から腐る程貰えるからええやろ?ちょっと早いけど、バレンタインチョコの代わりや」

笑顔と包と、交互に眺めて。
認識した所で、ちょっと赤くなったオレってば乙女……。
まぁ、それはいいとして。

「コレ、本命……?」
「義理のがええか?」

言って、にっ、と笑う。
悪戯っ子の様なその顔。
時に憎たらしいと思える時もあるけど、同時に凄く可愛いとも思う。
言ったら怒るから、言った事は無いけど。

「……ありがと」
「まぁ、たいしたモンやあれへんけどなー」

視線が一瞬外れた、その隙にギュッと抱き締める。
反射的に押し戻そうとした手が止まって、そろそろとオレの背に廻った。

「オレも探偵だったら、解り易いモノに頼らなくて済むかな」
「さあな」

 言葉と共に漏れる笑い。
 廻された手が、ぽんぽんと子供をあやす様に背を撫でてくる。
 同い年だってのに、何だか子供扱いされてるみたいなのは、出会った時からあまり変わらない。
 服部も大概ガキくさいトコ満載なんだけど、オレより大人を気取りたいなら……それでもいいさ。
 それで楽しいのなら。

「まぁ、オレの心盗めたのやし。ぬすっとで良かったんちゃう?」

 そして今、服部はさらっと言い放ったけど。
 その科白って、結構スゴイ事言っちゃってると思うのはオレだけ?

「……取り敢えず、ぬすっとじゃなくて、怪盗な」
「どっちも同しやって」
「違います」

 至近距離から、作った不機嫌顔を向ければ。
 返る微笑みがまた、幸せそうで可愛くて。
 笑みを返したら、そっと瞳が閉じられて。
 柔らかな唇が、オレのそれに優しく触れた。

 You have been the only one for me.
 You're always in my thoughts.
 ☆ HAPPY VALENTINE'S DAY ☆

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