Sweet Thrill
その人物については、かつて工藤新一について調べたついでで知っていた。
優秀な高校生探偵がライバルと認めている存在。
だとすれば。
工藤新一をライバルと認めている自分にとっても、彼はライバルと成りうる。
本当に?
工藤と一緒に居る時の彼からは、とてもライバルに成りうるような感じを受けられなかった。
いつも緩い表情で、工藤にも振り回されているように見える。
そんな人物がライバルに成りうるか?
が、推理をする時だけは違っていて。
工藤と同じ。
いや、また少し違った強い光。
それを瞳に宿す事も知っていた。
だから。
真実を確かめてやろうと思った。
どちらが本物の彼か。
後者なら、西で仕事をする時にも楽しみが増える。
そんな好奇心もあったのだが。
本物を見分ける目なら自分も確か。
そんな自信を胸に、今黒羽は改方学園の前に居た。
「…何のつもりや」
前を行く彼の歩みが止まった。
振り返った瞳には、思い切り不審の色。
校門を出てからずっと、自分の後を付いて来ている、見知らぬ人物を見ているのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。
「あ、気付かれちゃった?」
わざとらしい程の科白と態度。
彼の瞳の色は益々濃くなる。
「気付かんでか。野郎のストーカーなんてお断りやで」
「違う違う。そんなんじゃねーよ」
ホント、ホント。
顔前で両手を交差させて降ってみて。
「キミとお友達になりたいなー、って思って」
笑顔を向ける。
「………」
くるり。
背を向けて歩き出そうとする彼を慌てて止めた。
「ちょ、ちょっと待ってって!」
声は聞こえている筈だが、彼は歩みを止めようとしない。
これは本気で不審人物と思われたようだ。
何とかしなければ…。
「俺っ。工藤の…工藤新一のダチなんだよ!」
最終手段。
工藤の名前を出せば、きっとコイツは歩みを止める。
その考えは見事的中。
立ち止まり、彼が振り向いた。
「…工藤の…?工藤のツレが、俺に何の用や」
相変わらずの瞳の色ではあったが、取り合えず話は聞いてくれるつもりらしい。
「立ち話も何やし、あっこで話聞いたる」
言って先にある喫茶店を指差し、そちらに向かい歩き出す。
その様子に、ほっと胸を撫で下ろした。
…が。
「丁度喉も渇いとったトコや。コーヒーでも奢れ」
その一言は、まだ警戒している証と見えるが、たぶん、嫌がらせ以外の何者でもなかっただろう。
実は嫌なヤツ?
内心毒づきながら彼の後を追った。
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