初詣

「平次、こっちこっち」

 参拝を終え、お守りを眺める平次を呼ぶ声。
 手招きに応えて近くに寄ると、快斗が御神籤らしき箱を平次に向けた。

「はい。一個引いて」

 言われるままに一つ手に取り、その包みを開く。

「なんて書いてある?」

 実に楽しげに自分を見る快斗を、ちらり見て平次が紙に視線を落とす。

「筑波嶺の 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる。……なんやこれ。百人一首?」

 読み終わり、視線を上げた平次の瞳に。
 ニヤニヤと一人にやける快斗が映る。

「……なんやお前。気色悪いのー……」

 呆れた視線を向けるが、快斗の様子は変わる事なく。
 そのニヤついた顔のまま、ぽんぽんと平次の肩を軽く叩いた。

「これ、引いた人の、その時で一番の気持ちを教えてくれるって有名な御籤なんだよ」
「へ?」

 言われ、再度紙に視線を落とし、無言のままに読み直す。
 訳す内容とすれば、相当恥ずかしいその歌。

「……あ、有り得へん。ウソやそんなん。当たってへんて!」
「はいはい。隠さなくていいから。うん、オレは嬉しいよ、平次君」

 ふにゃふにゃとした表情を向ける快斗に、動揺を隠してきつい視線を向ける。
 だが全く動じる気配はない。

「あ、ちなみにオレのはこれ。読んでみる?」

 渡された御籤。
 そこにある歌を読む。

 君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな

 こちらも平次の同様恋の歌。
 そして同じく、情熱的な恋を表したもの。

「相思相愛ってヤツ?」

 言ってへらり笑う快斗を、再度呆れた視線で見た後に。
 快斗の視線が外れたその隙。
 気付かれぬよう、小さく笑った。

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