初詣
混雑を想定し、午前中は避けて午後からにしたものの。
それでも人で溢れる境内は、くっつく程の距離で歩かなければ、簡単に相手を見失ってしまうような状況で。
歩き難いな、と思う平次と。
言い訳が出来て嬉しいな、と思う快斗と。
二人は、自然と寄り添うかたちで本殿を目指していた。
「……もっと寂れた神社で良かったんちゃうかぁ?何でこない混んだ神社選ぶんや」
肩が人にぶつかっては、『すんません』と小さく謝りつつ。
平次がすぐ隣の快斗を、恨めしそうにじとり見る。
「ここじゃねーとダメなの。ほら、もうちょっとで着くから頑張れ」
自分に向けられる視線に軽く笑いながら。
快斗が見えてきた本殿の鳥居を指さす。
「参拝が終わったら、めちゃくちゃ美味い団子食わせてやるからさ」
言っても一度視線を戻せば。
先程の視線から一変。
輝いた瞳が快斗を捉えた。
「ホンマか?!したら早よ行こ」
花より団子。
単純なその思考回路が、本当に分かり易くて快斗は好きだ。
先程までの、少し不機嫌そうな表情はどこへやら。
楽しげな平次が、今は快斗の横に居る。
[ 31/48 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]