HappyChristmas

 タクシーで病院に運んで。
 ベッドが空いているからと、病室に運んでもらって点滴を受ける事数本。
 途中から眠っていた黒羽が目を覚ましたのは、すっかり夜も更けてから。

「……最低だな、オレ……バカみてー」

 呟いた言葉に、服部が気付いてそちらに視線を落とす。

「今、何時?」
「もうじき26日になるな」

 時計を眺めて答える服部に、黒羽は深い溜息を吐いた。

「何やってんだよ、ホントに……もうクリスマスも終わっちまう」

 交差させた両腕で顔を覆う姿を、服部が苦笑いしながら見つめて。
 伸ばした手で、優しく髪を撫でてやる。

「済んでまったもんはしゃーない。ええ事したのやから、そのうち神さんからプレゼント貰えるで」
「え?」

 覆っていた腕の隙間から服部を覗いて、互いの瞳が合う。

「どーせ川に落っこちた何か助けたとかで遅れたのやろ。そんで気ぃ失うくらい熱出しとったら世話無いけどな」
「……どーせバカですよ」

 笑いながら言われて。
 拗ねたように見た後、黒羽はくるり背を向けて。

「ごめんな」

 呟いて黙った。



 ぎし、とベッドが軋んで、少し沈んだ後で。
 こめかみ辺りに感じた柔らかさに、黒羽がゆっくり振り返る。
 間近にある、服部の顔。

「……まだクリスマス、終わってないで。ほれ、あと3分」

 見せてくる時計をちらり見て。
 すぐに視線を服部に戻す。

「プレゼント、何もあらへんのかいな」

 言って笑う瞳は優しく。
 どこまで好きにさせるんだよ、と黒羽は思う。

「一緒に買いに行くつもりだったから、物は無いんだけど……」
「別に物やのうてもええけど」
「じゃ、今はこれで我慢して」

 腕を伸ばし、既に近い顔を更に引き寄せて。
 唇を触れさせると当時に、遠くから微かに24時を告げる鐘の音が聞こえた。

「……こんで風邪移ったらウケるな。クリスマスプレゼントに風邪貰いました、とかたまらんわ」

 言って笑う服部を、両腕でしっかり抱き締めて。

「そしたら今度はオレが看病してやるよ」

 耳元で囁き、そのまま耳に口付けると、くすぐったそうに肩を竦める。
 それが面白くて何度か繰り返したら、最後には本気で怒られた。

 他に入院客が居なくて良かった。
 それくらいの勢いで。

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