WhiteChristmas

 工藤が用意しとった食事も、一緒に選んだケーキも。
 これなんぼすんの?ってシャンパンもみな美味しくて。
 食事中ずっと楽しかったのやけど。
 ノンアルコールや思っとったら、アルコール入りのシャンパンやったのは誤算やな。
 途中からやたら気分ええな、とは思ったけど。
 アホか工藤。
 折角一緒に居るのに、気ぃついたら寝てもうてたやんけ。



 小さな物音で目を覚ましたら、リビングは明かりが消えてて、ツリーの明かりだけがチカチカしていた。
 キッチンの方は明かりが点いてて、音はそっちからしてる。

「直すんオレもやる……」

 起きて向かうと、食器を片付けている工藤が居た。

「起きたのか?もう終わるから大丈夫。風呂入るなら先入っていいぞ」

 こっち向いて笑顔で言ったと思うと、すぐまた作業に戻る。
 暫く黙って眺めとったけど、なんとなく。
 皿を棚にしまおうとしている、その背中にぴったり張り付くように抱き着いた。

「うわ、ちょっと……落とすかと思ったろ。……寝惚けてんのかぁ?」

 ぶつぶつ言いながら工藤が溜息を吐く。
 寝惚けてへん。
 寝惚けてへんけど、色ボケとるかも知れん。

「風呂一緒入ろか」
「へ?」

 首筋に口付けて、工藤のシャツの隙間に片手を滑らす。
 脇腹辺りをゆるゆる撫でたら、工藤の肩がぴくり動いた。

「わー、待て待て!服部、まだ酔ってんだろお前っ」
「そうかも分からん。全然歯止め利かへん」
「それはいいけど、場所考えろ場所!」

 ここは料理をやる場所で、エロい事ヤる場所ちゃうって?
 工藤の耳を甘噛みしながら、そんなんどーでもええわ、とか思う。

「イヴの夜ゆーたら、恋人達はみなイチャイチャしてるで。工藤はしたないんか」

 確かに酔うてるゆうのもある。
 けどそれだけやない。
 ホンマのオレなんてこんなモンや。
 18歳の健康な男子やねんから。

「……バーロ。したいに決まってんじゃねーかよ。ったく、ムードもなんもあったモンじゃねーな」
「ムードなんて要らん。相手が工藤やったら他はどーでもええ」

 両手首掴んで離させられて。
 こっちに向き直った工藤と、真正面から視線が合うて。
 工藤が笑んだと思った次の瞬間には、両腕でしっかり抱え上げられとった。

 お姫様抱っこっちゅうヤツやな、コレ。
 工藤、意外と力持ち。

「それは嬉しいけど、やっぱ場所ぐらい考えようぜ?床なんて固いとこ、お前明日立てなくなんだろ」
「……別に立てへんくなる程ヤらんでもええねんけど……」
「あ?何か言ったか?」
「別に……」

 首に抱き付いてキスしたら、めっちゃ甘い味がした。
 ……直しながらケーキ食いよったな、工藤……。

「オレの愛の味がしたろ」
「……した」

 バタークリームみたいにひつこくなくて。
 けれど生クリームよりも甘い。
 工藤の愛は、チョコムースの味。



 あの時降り始めた雪は、今も止む事無く降り続いていて。
 街は白く、静かに染まる。
 深く降り積もって、全て隠してしまえばええ。
 オレ等の、この密やかな愛さえも。
 




 今日はクリスマスイヴ。
 誰もが。
 世界が愛に溢れる日。
 夜は熱と共に更けてゆく。

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