WhiteChristmas

「随分かかったな。オレと並び称されてるんじゃなかったのかよ?西の高校生探偵」

 オレに気付いてこっちを向いた工藤は、口元に笑みを浮かべてそんな事を言う。

「やかましな。オレやなかったら来られへんわい」

 工藤も自分も、吐く息がくっきり白い。
 そらそうや。
 今日は雪が降るかも、て天気予報でゆうとった。
 そんな中。

「……ずっとここに居ったんか?お前」
「ああ」

 近寄ってコートに触れてみると、恐く冷やこい。

「お前なら絶対来るって信じてた。まぁ、まさかこんなに待たされるとは思わなかったけど」

 コートに触れている手を見ながら、工藤が言って笑った。



 会うまで、思くそいちゃもんつけたるつもりやった。
 欲しいプレゼントは意味分からんし、待ち合わせ場所は暗号で送りつけてくるし。
 何考えてんねん、て。

「……イヴやゆうのに。何してんねんお前。アホやろ……ホンマに、よう言わんわ」

 せやけど。
 こんなん、文句なんかゆわれへんやん。

「会える筈がなかなか会えないと、より強く相手の事思うだろ?イヴだから。お前が好きって気持ち、最大にして会おうかと思ってさ」

 伸ばしてきた手が頬に触れる。
 ポケットに入っとったから、コート程冷えてへんけど。
 そんでもやっぱ冷やこくて。

「お前も、そうだと嬉しいんだけど」

 その冷やこい手とは逆の、細められたあったかい目。
 かなんな、て思う。



「……ホンマのオレが欲しいゆうたな」

 ライトアップもされていない。
 外灯も殆ど無くて、近付かないと互いの顔もよう見えん。
 ほんの少し離れたトコは賑やかやけど、ここは怖いくらい静かでオレ等しか居らん。

「そんなオレの内側が知りたいのやったら教えたる」

 両腕を伸ばして、工藤の頭を抱え込む様にして引き寄せる。
 唇を、触れさせただけですぐに離して。

「……こんなんせんでも、オレは常時最大や。好きで好きでどーにもならん」

 近いまま、囁くように言って。
 もう一度口付けて、冷え切っている工藤の身体を強く抱く。

「けど、いつもは理性で抑えとる。それが工藤は嫌なんやろ?それも分かっとる」
「じゃあ、何で?」

 少しだけ顔を離してから、に、と笑みを作って。

「えてきちやあるまいし。そこここで欲情してられるかい。身体いくつあっても足らんわ」

 言ったら、工藤の目が一瞬丸くなった。
 けど、すぐにまたほっそい嬉しゅーてたまらん、みたいなんなって。

「確かにな。それはオレの体力ももたねぇ」

 言って笑った。


 その後も何度かキスをして。
 人が見えるトコまでは手ぇ繋いで、来た道をゆっくり戻って。
 ツリーの前に着いた頃には、すっかりいつもの二人。

「しっかし。ホンマ見事やなぁ、このツリー。ほんまもんやろ?コレ」
「ああ。大々的には宣伝してねーけど、カップルには有名な名所なんだぜ」
「せやろな。お蔭でカップルん中に男二人とか、えらい目立ってんでオレ等」

 カッコいいのに可哀相とか。
 ほっといてんか、て声が微かに聞こえた。

「じゃ、これ以上目立ってらんねーし。家行くか」
「腹減った」
「飯は準備してあっから、ケーキだけ買ってくぞ」

 先に歩く工藤を追うようにして教会を後にして。
 洋菓子店でケーキを買うて外出たら、視界にちらちら白いモノ。

「雪や。ホンマに降ってきた」
「ホントだ。積もったら、明日はホワイトクリスマスだな」

 言いながら、隣で工藤が空を見上げる。
 その横顔を眺めてたら気付かれて。

「何見惚れてんだよ」

 とかゆわれたから。

「いや、カッコええな思って」

 て真顔で答えてやったら、一瞬表情が固まって。
 すぐ照れてなんやごにょごにょゆうとったから、取り敢えず置いて先に駅に向かって歩き出す。

「おい、コラ。投げっぱなしかよ!」
「えー?やって自分でフッといて照れるとかじゃまくさい」
「お前が普段言わねーような事言うからっ」
「ホンマのオレがええのやろー?何を今更」

 言い合いながら駅に着いて、電車に乗ってる間、工藤はずっと複雑な表情してなんや考えとったけど。
 家に着く頃には機嫌ようなっとったから、きっと勝手に自分で納得したのやろ。
 工藤新一、よう分からん男や。

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