WhiteChristmas

「プレゼント何がええ?」

 訊いたら。

「本当のお前がいい」

 ゆわれた。

 どない意味やねん。





 色とりどりのイルミに飾られた街は、見てるだけでも心が躍る。
 プレゼント抱えた子供を連れた家族も、寄り添った恋人達も。
 通り過ぎる人はみな幸せそうや。

 やのに何で。

「……アカン。さっぱり分からへん」

 すっかり冷めたコーヒー片手に、かれこれ30分は携帯と睨めっこが続いとる。
 こっちに着いて電話した後、工藤から送られてきたメールは。
 オレはここで待ってる、の文章に続いて、記号と英数字だらけの暗号文。
 解かな工藤に会う事もでけへん。

「この街のどっか、っちゅうのは合っとる思うけど……何処やねん、コレ」

 ホンマは会いたないんとちゃうか、と思いたくなるよな本気の暗号。
 オレなら解ける思ってんのか、単にいけずなだけなんか……。

「もう工藤ん家行って、そこで帰るん待っとった方が早いんと違うかぁ?あー、分からん。もう嫌や」

 何が悲しくて、普通に会える筈やったヤツに会う為に、こないさっぶいトコで暗号と格闘せなアカンねん。
 今日、クリスマスイヴやぞ。
 ホンマ、泣きたなってきた……。

 がっくり肩を落として、大きく溜息を吐いた時。

「Archangel、今日と明日だけ特別ライトアップしてるらしいよ?行ってみない?」

 通り過ぎるカップルの声が聞こえて、顔を上げて携帯を見た。

「……あ、そか。大天使……ん、読める。archangelや。ちゅー事は、あの丘の上にある教会やな!」

 細かい場所まではまだ解いてへんけど、行ってからでも何とかなる。
 冷めたコーヒーを一気に飲み干して。
 急ぎ足で丘の上を目指した。



 辿り着いた協会は、青と白のライトで彩られて。
 そらもう見事なクリスマスツリーも飾られていて。
 辺りは既にカップルで溢れ返っとった。

「……ここには居てへんか」

 ざっと眺めてみたけど、工藤らしい姿は無い。
 まぁ、カップルだらけん中一人で立っとるとか、普通に考えてムリやろな。

「したら何処や……。ん?ここ、建て直ししとる……」

 案内板が目に入って、それと携帯を何度も交互に眺める。

「えーと……これがaやとしたらーこれがこうなって…… an old church 。古い方の教会や。で、続きが…… a pond ……ここやな」

 案内板には、古い教会と小さな池の図がある。
 間違いない。
 工藤はそこに居る。

「……ホンマ、じゃまくさい事させよって。待っとけ工藤。思くそ文句ゆーたるからな!」

 人が溢れる場所を後にして。
 ポツポツとしか明かりの無い小道を進む。
 進んだら進んだだけ、人の気配も無うなって。
 木々が開けたと思った所で、目当ての池が見えてきた。

 その畔。
 やっと見っけた。

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