MAGIC(+K)
むかし。
永遠の時を生きる魔術師が、共に生きる助手として、一体の人形を造った。
人形は、魔術師の書物から色々な知識を学んでいたが、そんな中、一冊の物語の本と出会う。
人間から様々な感情と、愛を学んだ人形が、最後は魔法で人間になる物語だ。
人形は、繰り返し繰り返し、その物語を読んだ。
そしていつしか、自分も人間と言うものに興味を持ち、人間になりたいと思うようになっていった。
そしてある日、魔術師に言う。
人間になる魔法はないのか、と。
魔術師は戸惑った。
感情は与えていなかった筈の人形が、憧れと言う感情を見せた事に。
人間にする魔法はあったが、人間になってしまえば、もう永遠の時を共に過ごせない。
魔術師は必至で人形を説得する。
だが、人形の意思は変わる事がなかった。
根負けした魔術師は、人形と契約を交わす。
人形を求め、人形と分かっていても愛するような者が現れて。
人形も、その者を求めて愛し、結ばれる事が出来たなら。
その時は魔法で、人形としての永遠の命と引き換えに、人間としての限りある命を与える、と。
それは、叶う事は無いと魔術師は思っていた。
そして契約の後、人形を深い深い眠りにつかせた。
夢見たまま、目覚める事がなくとも。
それでも傍に置いておく為に。
けれど、有り得ない筈の事が起こった。
来られる筈のない人間が、魔術師の部屋に居た。
そして、人形の元へと一直線に向かって、その手に触れようとしていた。
魔術師は悟る。
運命は魔法で変えられるとしても、宿命は変える事が出来ない。
人形は、自分が造り出したその時から、この人間に出会う宿命を持っていたのだと。
「妖精が杖を振るうと、人形は人間の少年へと変わり。愛する人と共に、一生幸せに暮らしましたとさ。……おしまい」
ぱたん、と物語の本を閉じる。
キッドは細く息を吐くと、本をテーブルに置いて、瞳を閉じた。
「……今度は、オレだけに絶対の子を作ろ……」
浮世見の鏡には。
元気そうに、幸せに笑う、平次がそこに映っていた。
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