MAGIC(+K)
風呂で体を洗ってやりながら。
「なあ、平次。オレが帰って来ない間、何を考えてた?」
聞いてみる。
平次は少し考えるような素振りをしてから答えたが、やはり期待するような内容ではなかった。
「なんやろ。帰って来えへんなー、とか。飯冷めたなー、とか。死んだんかなー、とか」
「……最後は取り敢えず聞かなかった事にしてやる……」
溜息を吐きながら、お湯で泡を流して。
バスタオルで包んで水気を取る。
湯気の昇る体は、その艶も、吸い付く感じも。
全てが本物の人肌と変わらない。
「けど本当に……オレが帰って来なかったら。そしたらお前どうする?」
どちらかが朽ち果てるまで。
それが平次と新一の契約。
けれど、本当にそうなった時。
キッドは回収すると言っていたが、その後の平次はどうなるのだろうか、と新一は思った。
「帰って来るまで待つ」
少し考えた後に平次が言う。
「それでも帰って来なかったら?」
「ずっと待つ。新一が戻って来るまで、ずーっと待ってる。何年でも、何十年でも、何百年でも……。オレは待ってられるし、新一と一緒に居りたいから待つ」
『何をやっても死なないけど』と、取扱説明書にもあった。
その通り、人形である平次は死なないから、きっと何百年でも、何千年でも。
本当に待ち続けるのだろう。
「オレがそんなに生きてられねーよ」
生まれ変わりがあって、それでまた出会う事があったとして。
それまで待ち続けると言うのか。
思ったら、笑いが込み上げてみた。
「オレと一緒に居たい、か」
本当は、感情が無いのではなくて。
「一緒に居たいのは、何でか分かるか?」
「……分からへん」
きっと知らないだけなのだ、とあの時思い。
そして、先程の答えで、それは確信となった。
何百年でも、新一を待つと言った。
その言葉で。
「お前はオレが好きなんだよ」
「好き?」
「そう。好き」
「好き」
考えているのか、何度も繰り返し、好きと呟く平次の唇。
深く口付けて、抱き締めた体からは熱が伝わる。
取扱説明書の6つ目の項目。
その結果も、同時に何となく分かった気がした。
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