たまには普通にデート計画「2日目」
「……そんなにイヤだったのかよ。悪かったって。ごめん。それでいいか?」
帰り道、いきなり人の前に立って道塞いだと思ったら。
謝ってこられて、なんのこっちゃ分からへんかった。
「なに一人で怒って一人で謝ってんねん」
「花火観てた時も全然楽しそうじゃなかったし、お前が観覧車降りてからずっとそんな顔してるからだろ」
ゆわれて、自分の顔に右手の甲で触れる。
別に不機嫌そうにしてるつもりやなかってんけど。
「どんな?」
訊いてみたら、工藤は眉根を寄せた難しい顔を作って。
「こんな」
ゆうから、初めて自分が怒ってるみたいな顔しとったんやって気ぃついた。
「え、オレずっとそんな顔しとった?」
「してた」
工藤が怒ったんか拗ねたんか……複雑な表情になる。
アカンなぁ。
オレも自分の事しか考えてへんやんけ。
「あー、すまん。怒ってたんと違て、少し考え事しとって……」
観覧車ん時からずっと考えとった。
「考え事〜?なに考えてたんだよ」
首の後ろ掻きながら、視線を落として黙り込んだオレを、工藤が下から覗き込んでくる。
その瞳を見て。
可哀相な思いさしたし、ゆうたらなアカンかな……。
思って、工藤の左耳に口を寄せて。
「えーと……」
小声で考えてた内容を伝えた。
「……え。嘘」
聞いて、工藤は目ぇを丸くしてたけど。
「いや、ホンマ」
真顔でゆったら、めっちゃ照れてたんがおもろかった。
風呂上りは誰でもええ匂い。
けど、同しシャンプーとボディーソープ使てても、工藤とオレとは違う匂い。
抱き寄せるとより分かる。
工藤からはええ匂いがする。
「工藤が女やったらなぁ」
ぎゅう、と抱きしめる身体はちっとも柔らかくなくて。
それは工藤からしても同しで。
抱き心地なんかええわけないけど。
「そんな今更な事言ってんなよ。そもそも、オレが女だったら女だったで、お前惚れてたかよ?」
「無理。めんどい。こんで女とかムカつく」
「あのな……」
触れ合う肌も、伝わる熱も。
みな気持ちええからやっぱ抱きたい。
「せやから、今の工藤で良かったんや。けど、外では思うように動かれへんし……手ぇも繋がれへん」
堂々とは出来へん仲やから、辛抱せなアカン事めちゃくちゃあって。
あらアカン、こらアカン、て考えて止める自分と。
観覧車の天辺でちゅうとか、そんなオレかてしたくても出来ん事、平気でやってくる工藤と。
きっとどっちの好きも同しくらいなんやけど。
「……。今ので十分」
何となく負けてる気ぃして。
何したら並べるかな、て考えてみたけど。
やっぱ人前で何かする度胸もあれへんし。
せやから二人っきりん時こーする事で、同し位置に居るって気ぃになるのは……。
結局、自己満なんやろな。
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