たまには普通にデート計画「1日目」

 映画が終わったのが18時過ぎくらい。
 現在時刻19時近く。

「で?興味は持てたのかよ」

 一応訊いてみるけど。

「いや、全然」

 に、と笑って。
 思った通りの返答に、少しだけ脱力。

「……だから言ったのに」

 自分は愉しんでただけに、少しだけ申し訳なく思ってしまうのは、たぶん普通の反応だと思う。
 
「けど、工藤は楽しそうやった」

 そんなオレの心境なんか考えてもいないかのように。
 ニヤニヤしながら服部が言う。

「はあ?お前は何を見てたんだよ」
「工藤の顔。色んな顔しとっておもろかった」
「……金払って見るようなモノかよ、それ」
「オレがそんで良ければええんちゃうか?」

 一人何かを思い出しているのか、声が出ないように、口元を押さえて笑っている。
 小さく動く肩と、その姿が何かムカつく。
 
「意味分からねえ」

 ムカつくんだけど。
 2時間近くも、殆どオレだけ見てたんだ。
 思ったら少し嬉しかった。



 違っているから分からなくて。
 違っているから悩むけど。

「工藤、アイス食わへん?」

 唐突に訊かれ、指差す方向を見れば、アイススタンドが目に入る。

「え。寒いんだけど」

 この時期、この時間ともなれば少し肌寒いくらいで。
 日中ならともかく夜にアイス、それも外で食いたいとは思わない。

「寒いからこそのアイス。何がええ?買うて来る」

 思わないのに。
 拒否権ゼロか。

「……なんでもいい」

 やれやれと息を吐きながら、ひらひら片手を舞わせて適当に返し。
 小走りにスタンドに向って行って、嬉しそうにアイスを選んでいる。
 その後姿をただ眺めた。

[ 229/289 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -