愛の賛歌

 ある朝目覚めると。
 隣に何故か服部が居た。

 しかも。

「……なんか、老けてる……?」

 そう。
 どう見ても高校生じゃない。

 呆然と眺める事数分。

「んー……。もう朝かぁ?はよーさん……」

 もぞもぞ動き出したと思ったら、どうやらお目覚めのようだ。
 呟きながら片腕を伸ばしてきて……いきなりキスしやがった。
 突然すぎて反応が出来ない。

「……って、え?若っ!!は?ここ、どこっ?!」

 いや、色んな意味で驚いてんのオレだから。
 凄い慌てようでキョロキョロと辺りを見渡している。

「……ここ…知っとる……。新一の実家や…え?」

 目を点にしながらこちらを振り向いた。
 その顔は、確かにオレの知ってる服部とは微妙に違うが、服部である事は分かる。
 こんな表情も、よく知っている。

 っつーか。
 オレの事『新一』っつったよな、今。

「……え、じゃねぇよ。お前、服部?」

「見た目若い上にそん呼び方……え、何コレ。ホンマにタイムスリップ?」

 小首を傾げコチラを向くが。
 オレに同意を求めるんじゃねえよ、と言いたい。

「ちなみにお前…いくつ?」

 結構上に見えるんだけど。

「32」

 15年後って事かよ。
 オレの実家って言ったって事は、オレは15年後ココに居ない訳だな。
 ってそんな事より。

「さっきオレの事、新一っつったよな、工藤じゃなくて」

「ああ。それは、お前がそう呼んでゆうから……――」

「…オレが?お前に?名前で呼んで欲しいって??」

「あ……」

 マズイ、って顔。
 視線が合わないように逸らしてる。

 今までの、短いやり取りで見えるオレの未来って……。

「なぁ、起き抜けにオレにキスしてたけど。驚いたのは相手がオレだったからじゃなくて、オレが若かったから、だったよなぁ?っつー事は、その行為は普通の事って訳だ」

「い、いや……それは…」

「名前で呼び合って、毎朝おはようのキスをして……って、どう見ても恋人同士にしか思えないんだけど、未来のオレとお前」

 それ以外の答えは導き出せない。
 服部が、片手で顔を覆って項垂れた事を見ると、どうやら推理は正しいらしい。

 そうか、オレと服部、未来は付き合ってんだ。
 って事は、この気持ちを打ち明けても、嫌われる事はないんだな。
 寧ろ、告げた方がいい訳だ。

「そーゆー質問をするっちゅう事は、この世界のオレとお前はまだ付き合うてへん、ゆう事やんな…。あー、タイミングええんか、悪いんか……」

 言って頭を抱える。
 どうやら今のオレにその事実を知られたくなかったらしい。
 何で?

「オレに知られたら何かマズイ訳?」

「……マズイっちゅうか……オレ、自分で自分の首絞めとったんやな、って……ガッカリっちゅうか、なんちゅうか……」

 盛大な溜息と共に肩が落ちた。
 本気でガッカリしてるらしい。

 その様子に、オレの方がよっぽどガッカリだ。

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