Permit

 新幹線を待つホームでも、まだそれは続いていて。
 それが、自分に対する憎しみの感情だと気付いた。
 
 あんな純粋な想いを。
 気持ちを。
 オレは自分のエゴだけで汚した。

 それなのに。

「どうして……オレなんかを許そうとするんだ……」

 あの時、飲み込んだ言葉を呟いて、両手で顔を覆った。



 その後、服部の見舞いに行く事はなく。
 一度だけ服部から電話が来たが、忙しくて会えないとだけ伝えて切った。

 もう、会わない方がいいと思ったんだ。
 あいつは、オレを許しちゃいけないんだ。
 なのに。

「………なんで、居るんだよ………」

 家の前、座り込んでる人影に、思わず手にしていた鞄が落ちた。
 ゆっくりと立ち上がり、近付いたその人は、鞄を拾い上げてオレに渡した。

「記憶失くす前。オレとお前、一体何があったんや」

 まっすぐこちらを見る瞳。
 少しだけ、怒っているようにも見える。

「何かあったから、オレん事避けてるんやろ?仲良かったのに」

 暫し見つめ合う形になるが、何も言わず視線を外すと、オレはそのまま家に入ろうとした。
 その肩に、服部の手が掛かる。

「待てや。なんで逃げる…っ」

 肩の手を、払おうとして触れた瞬間。
 ビクっと身体を震わせて、払うより先に服部が手をのけた。

「……あ……」

 自分の手を見て、信じられないと言う顔。
 その姿に、思わず苦笑いが出た。

「…もう、会いに来るな」

 オレの声に顔を上げて、何かを訴える瞳を向ける。

 ほら、やっぱり。
 許そうとしたって、許せる事じゃないんだ。
 そう、許しちゃいけない。

 扉を潜り、背を向けたまま閉めようとした。
 だが、扉が動かない。

「待って!オレ、お前の事……」

 なんで…。

「……っ!?」

 手首を掴んで、思い切り引き込む。
 閉まる扉にあわせて、そこに服部の背を押し付けるようにして叩きつけた。

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