TIME AFTER TIME

『オレとおまえは似た者同士!知らん間に巡り合うてしまうんや!!』

 いつか、君が言った言葉。


 近頃、工藤新一の夢を見る。
 どんな内容だったのか、細かい事は覚えていない。
 けれど毎回同じ、そんな気がする。

「工藤に戻った夢ぇ?」
 
「ああ。この所頻繁に見てる気がする。内容は全然覚えてねーけどな」

「ふーん…。よっぽど元に戻りたい、ゆう気持ちが強いか。若しくは、戻れる日が、近いんか…」

 アイスを食いながら、服部がそう呟く。
 最後の方は少しだけ真面目な顔をして。

 戻りたい。
 その気持ちは、確かにいつでも持っている。
 けど、戻れる日が近い?

「何で、そう思うんだ?解毒剤だって、まだ全然完成する見込みはねーのに」

 ちらりと、視線をこちらに向けて。
 目が合った瞬間に、服部はいつもの表情に戻って。

「何となく」

 言って笑うと、またアイスを食いだした。

 早く元の姿に戻りたい。
 初めのうち、その気持ちは蘭の為だった。
 それが、服部に出会って。
 服部と過ごしていくうちに、戻りたい理由も変化していった。

 けど、そう言えば…。

「お前最近、元のオレに会いたいとか言わなくなったよな」

 出会った当初は、しょっちゅう言っていた気がしたのに。

「ん?そうやった?意識してへんし、そんなん。ちゅうか、今のお前と居るのも楽しいし」

 言うと、伸ばした片手で髪を少し乱暴に撫でてくる。
 その手は、温かい。

「ずっと、オレがこのままだったら。お前、どうする?」

 撫でる手を止めて。
 そのまま、服部は少し考えているようだった。

 少しして、手が、オレから離れてゆく。

「それがお前の望みやったら………いや。お前は、元に戻る。そうやろ?」

 首を傾けて聞いてくる姿。
 なぜか、その姿が胸に苦しい。

 今、工藤新一の姿に戻りたい理由は。
 その姿のオレに会いたがっている、服部の為だ。

 気付けば引き寄せて、そっと口付けていた。
 少しだけ見開かれた瞳に、一気に気持ちが戻される。

「……あ。ごめん……」

 思わずそう告げると、瞳は、柔らかな笑みに変わって。

「ええよ、別に」

 ぎゅっ、と。
 服部はオレを抱き締める。
 声が、少しだけ寂しそうなそれに聞こえた。

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