はるかぜ

「馬っ鹿やろ………言葉、間違ってんじゃねーよ…。何が…人を殺した、だ」

 声は震えていた。

「死んでもええ、思っとったし。結果的にやっぱ死んでもうたし。人殺したのと同じやろ?あー、自殺と同じか?はは、この際細かい事は気にすな」

 明るく言う、その声が腹立たしかった。

「オレは……許さねーぞ…」

 いつでも勝手なヤツだったけど。

「許さんでもええ、ゆうたやろ」

 最後まで。
 …本当に勝手なヤツ。

 上げた瞳に、やっぱり笑顔を向ける服部が映った。

「お前と一緒に、また花見が出来て良かった」

桜の雨が降る。

「服部」

 薄紅の霧。

「オレの好きな花。いっちゃん好きなヤツと見れた。悔いないで」
「…っ、それ…っ!?」

 強い風が吹いた。
 一斉に舞う花弁。
 一瞬瞳を閉じた。

「なぁ、工藤。笑って」

 次に開いた時。

「服部っ!?」

 そこに彼の姿はなかった。




「…遅かったな…」

 急いで事務所に戻り、蘭と駆けつけた病院。
 先に来ていた小五郎がぽつり呟く。

 桜舞う公園で服部が消えたあの時間。
 病室の服部も、丁度息を引取っていたらしい。

「もうすぐ平次の両親もこっちに着く。顔見とくなら今のうちだぜ」

 言って、小五郎が霊安室の扉を指した。

「ボクは…行かないよ」

 扉に手をかけた蘭が振り返る。

「そう」

 さっきまで、自分が服部と一緒だった事を知っている。
 蘭は僅かな微笑みをコナンに向け、一人その扉を抜けていった。

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