You have been the only one for me.

「何がいいかずっと考えてたんだけどさ。やっぱお前が欲しいモノの方がいいかなって。だから、まだ何も用意してないんだけど。何がいい?」

 本日全ての講義が終わって。並んで歩く、キャンパス内の並木道。この道は、春は満開の桜でトンネルになる。服部のお気に入りの場所でもある。

「別に。なんも要らん」
「オレだけ貰って終わりよ」
「言うても、オレも食ってるからな、レモンパイ」
「そうだけど」

 高校を卒業してすぐ、服部が東京に引っ越して来て。一緒の大学に通い始めてからずっと。花見はいつもこの場所だ。今はまだ、蕾すらないけど。

「じゃ、また一緒に食えるモンにするか。何が食いたい?」
「うーん……。お好み焼き?」
「……あのな」

 並木道を抜けると正門が見えてくる。そして、その正門を抜けると。

「冗談や、冗談。ほんなら、帰りしなにええの見っけたらそれ買うて?」

 キャンパス内では見せない、オレだけの服部に変わる。仕草とか表情とか、ホント細かいところなんだけど。この瞬間は、オレのすげーお気に入り。

「な?」

 少し頭を傾けて覗き込む。一層大きく見える瞳が笑ってる。朝にマシュマロで仕返ししてたくせに、そんな事はまるで無かったみたいに無邪気な姿。それはまるで万華鏡。

「ああ。じゃ、歩きながら探せよ」
「ん。何がええかな」

 いくつにも変化して。一つを見たら、またその次が見たくなる。
 並んで歩く。横顔がまた、違った模様に変化した。

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