You have been the only one for me.

バレンタインデーにチョコを贈っていただけるのは有難いが。ホワイトデーにお返しをするのはめんどくさい。
 義理とかお疲れ様とか、本命以外は消えてくれないか。本気でそう思う。

「……まだ買うんかい」

 次々とカゴに入れられてゆくお菓子を眺めつつ。服部が呆れたような声を出す。

「……仕方ねーだろ。オレだって買いたくて買ってるワケじゃねーよ」

 本当なら。本命が居る目の前で、こんなモノ買ってる事自体ナシだ。

「相変わらずのモテっぷりやなぁ。オレ先に買うてくるわ」

 言って、レジに向かう服部の手にはお菓子が4つ。渡す相手は分かってる。静華さん、遠山さん、園子、蘭の4人だ。
服部がモテない訳じゃない。それ以外の相手は、全てやんわり断って受け取っていないってだけ。正直、貰ってたらオレよりお返しの数が多くて大変だったんじゃねーか?そう思う位には居たらしいって話は聞いている。

「……なんで受け取っちまうかな、オレ……」

 呟きながらカゴの中身を見て。自分の八方美人さに乾いた笑いしか浮かんでこない。
 女の子だったら。きっとこんな姿を見て、内心は穏やかではいられないんじゃないかと思うけど。服部は女の子じゃないから、実際どう思っているのかが分からないし。
 けど、結構独占欲が強かったり、やきもち焼きだったり……そう言う部分はあると思うんだけど。恋人になってから、あんまそう言う素振りを見なくなった。

なんでだろ。

「お待たせ」

 先に買い終わって、近くのベンチに腰を下ろしていた服部の元へと向かう。上げた顔に、特に変化は見られない。

「したら次どこ行こか。疲れたし、どっかで茶ぁでも飲もか?」

 立ち上がって、目線の高さが同じになって。向き合う瞳に怒りの色は見られない。たぶん、何とも思って無いんだろうな、と言うのが見てとれる。

「……どないしたん?」

 じっと見たまま、何も返さないオレを不審に思ったのか。服部の眉根が寄ったのを見て。

「何でもない。カフェ行こうか」

 言って笑みを向けると。服部の眉間も緩んで、笑みを返して頷いた。
 本音はちょっとは嫉妬して欲しかった。なんて言ったら、きっとまた呆れられるんだろうな。思ったから、それ以上は考えるのをやめておいた。

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