Way to love

「コレなーんだ」

 レモンパイを食べ終えて、くつろぎながらコーヒーを飲んでいると。そう言いながら、服部が小さな紙をオレの前で広げてみせる。

「何って……」

 その紙には見覚えがある。ピンクとホワイトのストライプ。朱で小さく書かれた『イチゴ味』の文字。

「……普通、とっとくか?そんなモン」
「自分かてとっといたくせしてよう言うわ」

 ケラケラ笑いながら。服部が隣に腰を下ろしてオレを覗きこむ。

「ほんまはとっといた事、すーっかり忘れとったのやけど。今日、お前がとってたチョコの包み紙見て思い出してん。とってた理由は、たぶん工藤とはちゃうけどな」

 言って見せる、悪戯っぽい瞳と笑みは、あの頃より大人になった今も変わらない。見慣れてる筈なのに、思わずどきりとさせられる。
 オレの好きな表情、その1。

「なんだよ。オレをバカにする為にでもとってたのか?」
「んー。近いけどハズレ」
「近いのかよ」

 わざと拗ねたような顔を作って見せると、服部は悪びれた様子も無く笑って。

「オレの推理が正しかった事、いつか確かめたろ、思ってとっといた」

 言いながら、両手で摘み広げたキャンディーの包み紙へと視線を落とす。
 
「推理……?」

 オレの声に顔を上げて。こちらを向きなおした瞳が、先程とは違った色で微笑みかける。それはとても優しい。たくさんある服部の表情の中で、オレが1番大好きで。オレだけが見れる表情。

 服部の唇が、ゆっくり開いて。

「苺……正確には、苺の花は『尊重と愛』が花言葉。合っとる?」

 甘い声が告げたのは、正解。

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