Way to love
「何?」
差し出した手の平の中のそれを、暫しじっと眺めて。上げられた視線が、意味が分からない、と問い掛けてくる。
「友チョコのお返し」
「は?」
あの日もらったのは10円のチョコレート。今、手の中にあるのは、同じく10円で売っているキャンディーが1粒。
「有り難く思えよ。世界に一つの、お前の為だけに買った貴重なキャンディーだ」
これは、色んな意味でのお返し。
本当は嫌味も込めて、まともなモノを買って渡してやろうか、とか。ついでに、鈍感馬鹿に真実を告げてやろうか、とか思ったんだけど。結局それはできなくて。けれど何かを渡したくて選んだ1粒。まさか、この1粒に意味があるなんて、きっと気付かないだろう。
服部が、包み紙をひょいと指先で摘んで。
「オレの為だけに、なぁ」
目の高さまでその手を上げて、キャンディーの包み紙の文字を読む。
「……イチゴ味」
呟いた時。僅かに眉根が寄った気がした。
まさか、気付いた……?
思ったけど。
「どーせやったら、ブドウ味とかのが良かったなぁ。イチゴの飴ちゃんは大抵甘過ぎる」
言って笑うと、包みを解いて口へとキャンディーを放った。その姿に。
だよな、気付くワケねーよな。
思いながら、そっと胸を撫で下ろした。
だけどもし、気付いているなら。葡萄は確か……――。
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