Way to love

「何だよ、コレ」

 手の平に乗ったそれを見下ろす。瞳に浮かべる訝しげな色と、その色を乗せて発する声。

「見て分からんか?チョコやチョコ」
「いや、それは分かる。そうじゃなくて……――」
「今日バレンタインやから、友チョコ」
「要らねぇよ」

 つき返そうとする手を、自分のそれでやんわりと止めて。

「ええから貰っとき。世界に一つだけの貴重なチョコやぞ」

 言って、服部がにっと悪戯っぽく笑った。

「10円のチョコの何が貴重なんだよ」

 値段が問題なワケではないが、思いっきり不満と呆れを込めた声色で返して。返品に失敗した手の平の中のチョコに視線を落とし、小さく漏れる息。

「オレが友チョコなんぞ渡したの、人生初やぞ。な?貴重やろ」
「何が『な?』だよ。意味分かんねー」

 やれやれと言った口調で呟きながら、包み紙を開け、一口サイズのチョコを口へ放り込む。貴重らしいチョコは、小さいくせにやたら甘い。
 その様子を覗き込むように見ている服部の顔が満足気で、何故か酷く腹が立ったから。

「何へらへらした顔で見てんだよっ」
「いたっ」

 入れた蹴り。身長が低いモンだから、それは思い切り服部の脛に当たって。痛がってる服部に、ごめん、とは思ったものの。

「友チョコなんて、要らねぇんだよ」

 聞こえないように呟いた言葉は本心。服部の口から、友達だとか、親友だとか。そう告げられる度にへこむのを、たぶんコイツは分かってないから。
 その痛みはオレの心の痛みだ、体で味わえ。
 心の中で思いながら、ぺしり、服部の後頭部を追い討ちで軽く叩いた。

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