Holy Night

 テレビの画面では、朝からずっと、この前例のない大雪についての説明を繰り返している。空は勿論、JRも軒並み運休。駅や空港で、途方に暮れる人々の顔が映し出されていた。
 その一方で。ホワイトクリスマスなんて、はしゃいでいるキャスターや人々も居るから、世の中ってものはおもしろい。

「ホワイトクリスマスねぇ。そもそも、クリスマスは明日で、今日はイブなんだけどな。つーか、雪なんて、都会で積もっても迷惑なだけだっつーのに。なにが嬉しいんだか」
「ほんまやで。はー……。なにが悲しゅうて、イブに男二人で家に閉じ込められてなあかんねん」
「そりゃおめー、自業自得だろ。そしてオレはとばっちり」

 学校が休みになると同時に遊びに来た服部は、本当ならイブの今日、大阪に帰る筈だった。地元の、和葉ちゃんや学校の友達連中と、クリスマスパーティの予定があったらしい。

「なんなら、園子んトコのパーティ行くか?まぁ、外吹雪いてるし。庭すげー雪積もってるし。門まで行くだけでも一苦労だけど」

 そう言うオレもオレで。服部が帰った後は、本当なら今日は園子の家のパーティに、蘭と一緒に参加する筈だった。
 まぁ実際、行こうと思えば行けるんだけど。

「ええ。わざわざ外に出たない」

 言って、ソファに転がり、クッションを抱いて丸くなってる、コイツ一人置いて行くのもなんだし。服部が行かないと言うから、オレも行かないことにした。

 その経緯を、携帯から蘭にメールする。

『分かった。私も今日はやめておく。プレゼント、明日渡せたら渡すね』

 プレゼント。やべぇ、オレ買ってねぇ。

 返ってきたメールを確認しながら、ぽりぽりと頬を掻く。ま、会った時に買ってやればいいか。思って、携帯を閉じて。
 服部に視線を戻すと、あいつも携帯の画面を眺めてて。どうやら和葉ちゃんとメールをしているようだ。

「和葉ちゃんなんだって?」
「ん?んー……まぁ、怒っとるわ」

 困ったな。仰向けに寝転がる服部の横顔に、そんな文字が書いてあるみたいに見えた。

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