Holy Night
「わー!なんやこれっ!!」
聞こえた声に目覚め、上半身を起こして目を擦ると。バタバタと。騒々しく階段を駆け上り、廊下を駆けて来る足音が聞こえた。
「おい、工藤!窓の外見てみぃ、窓の外!!」
バン。そんな音が聞こえそうな勢いで開いたドアから、勢いよく入ってきた服部が、オレのベッドに乗っかる。
「……るせーな。今何時だよ。つーか、朝から顔ちけーんだよ」
上半身だけ起こしているオレの、すぐ目の前にある顔を。片手でぐい、と押すと。
「ええから。カーテン開けろや、カーテン。お前もビックリするから」
言って押しやる手を退けられ。退けた手で指差されたカーテンに視線を移す。
「ったく。なんだっつーんだよ」
ブツブツ言いながらベッドを降りて。窓際まで歩き、カーテンを掴む。そのまま、勢いよく両手で開くと。
「……」
いつもとは違った眩しさが、寝起きの瞳を射してきて。眩しさの元となっている光景に、驚いて一瞬声が出なかった。
「……な。驚いたやろ」
「ああ……」
目の前に広がるのは、一面真っ白な世界。それも、この窓からは今まで一度も見たことがない程の。しかも、空から舞い落ちるそれは、まだまだ止まる気配を見せず。勢いよく落ちてくる。
これはまるで、北海道か東北の雪国にで迎える冬の朝のような……――。
「オレ、帰られへんわ。どないしよ」
ベッドの上に座ったまま呟く服部に。
「……ま、仕方ねーな。諦めて、うちでのんびりすりゃいいんじゃね?」
小さく息を吐きながら、そう返して振り向くと。眉をハの字に下げた、捨てられた子犬みたいな服部が瞳に映った。
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