願い

 目覚めると、見慣れない天井。
 ここはどこだ、と見渡してみる。
 けれど、見覚えのある物はひとつも無い。

「気がついたのか?」

 開いた扉から誰かが入ってきた。
 それは、よく知っている顔。

「工藤」

 そう。
 その顔は工藤新一。
 けれど……。

「うわ、懐かしいな、その呼び方!」

 言って笑うその人の顔は、知っているものよりもずっと大人びていて。
 声も、少しだけ低くなっているような気がした。



「……懐かしい?」

 今、彼は確かにそう言った。
 であるとすれば。
 大人びているのではなく……。

「まさかとは思ったけど。やっぱどー見てもお前、昔の平次だよな?見た目からすると……――高校生ん時?」

 まじまじと自分を見てそんな事を言う相手。
 その人の瞳から、服部は見開いた目を離せなかった。

「……え。これ、夢……?」

 彼の目は、本当に懐かしい者を見る瞳。

「残念。夢じゃねーぜ?なんなら、抓ってやってもいいけど」

 片手を服部の頬に当て、抓ろうとする。
 その手を掴んで止めさせて。

「お前……工藤……今、歳なんぼ?」

 瞬きもせず、工藤の瞳を見つめて服部が問う。
 それに、瞳で笑んで。

「28」

 工藤がさらりと答えた。

 10年後の工藤新一。
 それが、突然目の前に居る。
 これが夢ではないのなら、何の意味をこめた現実なのか?

[ 256/289 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -