My heart is pounding.

 この頃、服部の様子がどうもおかしい。
 例えば、人と話をする時は、必ず相手の瞳をじっと見て話すヤツだけど、最近はほとんど瞳が合わない。正確には、合いそうになるとすぐに逸らされる。
 それから、人との距離感がおかしいヤツだから、いつもぶつかりそうなぐらい傍に立ってたりするのに、人一人分は確実にスペースが空くようになった。だから、触れるにもわざわざ手を伸ばしたり、傍に寄らなきゃならない。

 ……何コレ。オレ、避けられてんの……?



「なあ、服部」
「何や」

 返事はするものの、やっぱりコッチを見ようとはしない。まあ、今はテレビ観てるからってのもあるけど。でも前は、呼んだらちゃんとコッチ見てくれたと思うんだ。たぶん。

「オレの携帯取って。お前の後ろのボックスの上に乗ってるから」
「……ほれ」

 携帯の方には視線を向けたくせに、渡して寄越す時にはコッチ見ねーのかよ。
 腹が立って、携帯を寄越す手ごと思い切り握ってやったら。ビクリ肩を震わして、ぎょっとした目で手を見たと思ったら、すぐに手を引っ込めようとした。だから、逃さない、とばかりに更に握る手に力を込めた。

「ちょ、工藤、何?!」

 あ、目が合った。

「何かないと、お前に触っちゃダメなのかよ」
「あかん事ないけど……ビックリするやろ」

 言いながら、合っていた瞳がゆっくり逸らされて。服部は酷く困ってるような表情を浮べた。

「服部。お前、オレに何か隠し事でもしてんの?」
「そんなんしてへんし。ええ加減、手ぇ離してくれへんかな」

 胡散臭ぇ。
 大体にして、服部はこんな大人しいヤツじゃない。イヤならイヤで、乱暴に振り解くか、空いている手でオレのそれを叩き落とすかしてる筈だ。
 それが何だ?この態度。おかしいだろ。絶対おかしい。

「……まさかお前、黒羽の変装?」
「はあ?」

 思い切り呆れた声と共に振り向いた表情は。なんだか久しぶりに見る、オレのよく知っている服部だった。

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