meet again after a long time

 数時間前……――。



「あー、これ以上はあかん。ストップ」

 ソファに倒して、馬乗りになった状態で。近づけた唇を片手で思い切り塞いで止められた。

「なんでだよ。恋人同士なんだろ?オレ達」

 その手を退けて、不満気に言うと。

「恋人なのは、コナンやのうて工藤新一や」
「どっちもオレだろ?」
「そうやな。そうやけど……工藤新一っちゅう男は、コナンより露骨にヤキモチ焼きやねん」
「はあ?なに言ってんだお前。オレが自分にヤキモチ焼くってのかよ?」

 片眉を上げ、変わらぬ声色を続けると、服部は少し困ったような顔で笑って。オレを両手で持ち上げ、身体を起こすと、そのまま膝の上に座らせた。

「例え自分自身であったとしても、や。万が一、戻った時にまた記憶がのうなっとったとして。コナンの姿のお前になんかされたって知ったら、ぜーったい怒るし。怒らすと後が面倒やねん」
「面倒って……。本人相手に面倒とかよく言うな」
「せやかて、ホンマに面倒やねんからしゃーない」

 目線を合わせるように近付いて、そう言う服部の表情は。言葉とは合っていてなくて、なんだか楽しそうにも見える。

「もっとはよう言うてくれとったらなー。当時のオレがさせとったかも分からん」
「なんだよ、それ。釈然としねーな」
「ははは。残念やったな、コナン君」

 ぽんぽんと人の頭を叩いて、悪戯っ子みたいに笑う。その表情は、オレのよく知っている服部。その人と何も変わらない。

「ガキ扱いすんなっつってんだろ」

 手を払い除けるが。

「今んトコ、見た目はガキやろ?」

 もう一度。ぽん、と片手が頭に乗る。

「……にゃろ」

 その手を取って。引くと同時に、前に倒れる服部の後頭部を捕まえて。
 今度はちゃんと触れた唇。
 開いたままの瞳に、同じく、大きく見開かれる服部のそれが映った。

「お前な……人の話ちゃんと聞けや」

 唇をまだ触れられる距離に離すと。見開かれていた瞳が徐々に細まって、非常に不機嫌そうなそれになる。

「オレが大人しくお前の言う事聞くと思うなよ?」

 小声で言って、もう一度。軽くだけ唇に触れた。

「可愛げがない」

 小さく漏れる溜息。
 あるワケないだろ、そんなもの。瞳で告げて、更に唇に触れると。服部の瞳が閉じるのが見えた。
 オレもゆっくり瞳を閉じて。触れるだけだった唇に、深くそれを重ねる。

 苦しくなる程のキスの後も。額に、瞼に、鼻先に。頬に、耳に、首筋に。これまでの想いを全て込めて。何度も、何度も。服部が本気で呆れるくらい、沢山のキスを贈り続けた。





 そんな事があった事実も。

 窓の向こうで見送るオレに笑顔で手を振って。姿が見えなくなったところで。

「せやから面倒や言うたのに。……まあ、上手い事逸らせられたからええか」

 なんて。服部が言っていた事も。
 オレだけが知らない、再会した二人だけの永遠の秘密。

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