meet again after a long time
「謎は解けたぜ」
リビングの入り口から、ソファに座っている為、こちらに背を向けている服部に声を掛ける。
「さようか」
こちらを振り向くことはせず、そのままで答える背中。そちらへと歩み寄って、手を伸ばせばすぐ触れられる位置で止まった。
「オレに事実を隠して。証拠も全部消そうとして。オレがずっとこのままだったらどうする気だったワケ?」
暫く、服部は黙っていて。振り向いた時の表情は無表情。
「別にどうも」
「友達のままのフリを続ける?それでいいのかよ」
顔色一つ変えず頷く様に、一瞬心が折れそうになった。けど、それ以上に腹が立つ。
「ふざけんな。オレはそれで良くなんかねえんだよ」
襟首を掴んで、すぐ顔の前まで引き寄せて。少し顎が上がったせいで、見下ろしてくる瞳を睨むように見上げる。
「お前はMだからいいのかも知んねーけどな。オレまで苦しめようなんて、いい度胸してるじゃねーか、服部」
「誰がMや。ちゅうか、苦しめる……?」
オレの言葉に、先程までより少しだけ大きく開かれた瞳が映る。
「お前がオレの気持ちを知ったのはなんでだ?」
「?そら、工藤が言って来たから」
「だよな」
なんでそんな事を訊くのか。服部の瞳がそう言っていた。
ちょっとは変わったかと思ったけど、鈍感なのは相変わらずみたいだ。
「オレが、工藤新一に戻ってすぐお前の事好きになったと思ってんの?」
「すぐかは知らんけど……」
「だからお前は、オレに推理勝負で勝てねえんだよ」
「はあ?!」
オレの言葉で、服部の表情は一変。感情丸出しのそれになる。
……短気なのも相変わらずだ。
「オレがいつお前との勝負で負けたんや!全部あいこやろっ」
「引き分け、ねえ」
自分自身の気持ちに気付いてなくて、先にオレにそれを見抜かれて告られて気付いてる辺り、負けてると思うんだけど。
さっきとは逆に。襟首を掴まれて、顔の位置は今は同じ高さ。オレは宙に浮いてる状態。
カッとなるとすぐ、オレが子供の姿な事も忘れる。対等に見てくれてるって事だけど、実際困った性格だ。
思わず苦笑いがもれる。
「なにわろてんねん」
「いや?ホント、変わらねーんだなって思っただけだよ」
「はあ?」
襟首を掴む服部の手に、自分のそれを重ねて握って。
「取り敢えず、引き分けだったって事にしてやる」
「してもらわんでもあいこやったんや」
「はいはい。じゃ、それでいいよ」
「なんやその譲ってやりますみたいな態度」
「あー、もー、うるせえ」
空いてる方の手を、服部の後頭部に回して引き寄せると。まだ続けそうな言葉を、唇を塞ぐ事で止めた。
見開かれる服部の瞳に、唇を離しながら。に、と笑みを向けてやる。
「オレは戻る前から、元々お前の事が好きだったんだから。変な気なんか遣わなくて良かったんだよ、バーカ」
服部の手から徐々に力が抜けてって、すとんと足がやっと床へと戻った。
「……いつから?」
驚いたままの表情の服部に。
「さあ?忘れた」
答えて、今度はちゃんと笑顔を向けた。
その後の服部は、恐らく恋人の工藤新一に見せている、普段の服部平次だったんだろうけど。オレがコナンの姿だからなのか、オレの性格が恋人の工藤新一と違ってるのか。時々戸惑ってる、その表情がなんだか凄く可愛くて。全てひっくるめて、やっぱ間違いなく、工藤新一は幸せなんだろうな、と思った。
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