meet again after a long time

 まずはパソコンから。

「他になんか考えつかなかったのかよ、オレ」

 電源を入れて起動した画面。そこにあるフォルダ名にガックリと肩が落ちる。
 そのものずばり、『服部』と言う名前のフォルダが堂々とデスクトップに置いてあった。自分以外が起動したら、確実に怪しまれる事間違いねえ。

「は?パスワード?」

 流石にフォルダには鍵はかかっているけど。

「オレの誕生日……は違うか。ホームズでもない。まさか、これもそのままずばり服部の誕生日……でもねーな。なんだ一体」

 思い当たるものは色々入れてみるが、どうやらどれもハズレのようで。フォルダが開く気配は全くない。
 よっぽど他に見られちゃマズイ写真かなんかが入ってるに違いねえ。とか思いつつ、ホントにそうなら、それはそれで我ながらどうかと思う。

「仕方ねーな……先に携帯見てみるか」

 一つ、小さく息を吐き。部屋を出て行く前に、服部から受け取った携帯の画面をつけてみる。こちらも、やはりロックの番号が変わっていた。が。

「やっぱこっちは服部の誕生日だ。どんだけだよ」

 どうやらオレの頭の中は服部だらけらしい。まあ、分からなくはない。自分だし。オレなら十分有り得る。

「この調子だと絶対ある。……やっぱりな」

 メールを開いてフォルダを見ると、他にもフォルダはあるものの、個人名であるのは服部のみ。入っているメールはそれ程多くない。

「ま、全部取ってたら容量オーバーするからな。当然っちゃ当然だけど。わざわざ残してるって事は、オレ的には重要なメールだって事だよな」

 全て件名は無いけど、ある程度の本文は見える。それを目で追うと、会いに来るって言ってるメールとか、他愛も無いメールも沢山あって。その中に、ぽつぽつと見てるのが恥ずかしくなるメールもある。

「言わされてんのか、自分から言ってんのか分かんねーけど。アイツでもこんな事言えるんだな」

 残されているメールの中には、オレの知らない服部がいっぱい居る。正直、服部にこんな面があるとか知らなかったし、意外だな、と思う。
 まあ同時に、自分自身も意外なんだけど。こんなメールが返ってくるって事は、それ相応のメールを自分が送っているって事だからな。

「……あ。もしかして」

 好き全開。隠そうともしてない感じのオレから察するに、フォルダのパスワードがなんであるのか。なんとなく分かった気がした。
 それが分かるメールが残っている事を祈りつつメールを開いていく。すると。

「あった」

 一番最後。一番古いメールが探していたそれ。その受信日付をパソコンで入力する。

「やっぱり」

 開いたフォルダの中には、テキストファイルが幾つかと、写真が大量に入っている。
 パスワードは、服部との付き合いが始まった日。

「……」

 はしゃいでる服部。なにを見てるのか、真剣な表情の服部。美味そうに食べてる服部。眠ってる服部。見た事がない笑顔の服部……――。
 写真を見てるだけで分かる。絶対、今のオレは絶好調に幸せだ。そして恐らく、服部も。
 あのメールは、言わされてるモノじゃない。服部の本心だ。だとすれば。

「だからあの時」

 オレが記憶がないと言った時。服部の表情が固まったのは、ショックを受けたからに違いない。
 それを隠してるのは、きっとオレの為だ。バカなヤツ。

「まあ、知らねーなら当然か。そんな気遣いをするって事は、オレが言ってないって事だもんな」

 フォルダを消し、パソコンを閉じて。ゆっくり椅子から降り、部屋を出た。

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