meet again after a long time
服部と二人、海水浴に出掛けた帰り道。たぶん、電車に乗ってた辺りから。なんか寒いな、とは思っていた。
長い事海水に浸かってたからかな、と思っていたけど、実際はそうではなくて。
「……38度4分……。夜間診療行こか?」
がっつり風邪をひいたらしいオレを、服部が体温計を片手に、心配そうな顔して覗き込む。
「いい……一晩寝たら治るだろ」
「けど」
「大丈夫だって。そんな心配すんな」
片手を伸ばし、服部の頬に触れると、少しだけひんやり冷たい。笑みを向けてみるが、心配そうなその表情が和らぐことはなく。寧ろ、手から熱さが伝わったのか、その表情は深みを増した。
「……薬は?風邪薬か解熱剤」
「あー……いつも博士んトコから貰ってっから無いかも」
「なんでやねん。もー、常備薬くらい置いとけや」
眉毛をハの字に下げると、体温計をテーブルに置き、服部がソファから立ち上がる。
「取り敢えず、タオル濡らして来るから。このままちょぉ待っとけ」
言って、リビングを出てゆく背中を目で追い掛けて。一人になって目を瞑った。
そこから、記憶が無い。
[ 37/289 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]