はじまりはいつも雨

 その日も、やはり雨。


「工藤新一です。ずっと休学してましたが、このたび復学できることになりました。このクラスは少しの間ですが、よろしくお願いします」


 きっと裏で手を回したに違いない。紳士的に挨拶をする姿を、頬杖をついて眺めながら平次は思った。


「じゃあ、工藤は窓際の、服部の隣の席に着きなさい」
「はい」


 先日、いきなり席替えが行われて。その際、席が一つ増えていて、平次の隣が見事に空いた。生徒分しか席はなかった筈で、空きが出来ることがまず不自然。どう考えても、決められていたとしか思えない。


「……工藤。お前、センセになんか頼んだやろ」
「別に?服部君とは、特別学習の前に何度か会って、それ以来仲良くさせてもらってます、って言っただけだけど」
「ほーぉ」


 ずっと学校に来ていなかった生徒が復学する。友達も居ないだろうと思っていたら、知ってる生徒が居て、仲良くしていると言う。それならば、その生徒と同じクラス、近い席にした方が馴染むのも楽だろう。そう思うのが普通。そして、まんまと先生達はその新一の思惑通りに動いた。それだけの話。


「取り敢えず。これからもよろしく」


 言って向けられた笑顔に、盛大な溜息を吐いて、平次は机に突っ伏した。

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