はじまりはいつも雨
学校なら、たぶんどこにでも存在する七不思議。当然、平次の通う、この高校にもそれはある。音楽室に体育館。トイレと視聴覚室、etc……――。
七つを超えているのでは?
首を傾げたくなるぐらい噂はあって。それだけに、そんなものは存在しない。平次は常々そう思っていたし、非科学的だと、噂を楽しそうに話す同級生を、呆れた視線で眺めていることが多かった。
「誰」
放課後の図書室。本に手を伸ばしかけて、感じた気配に振り返る。
視線の先、通路から窓までの間に人影は見えない。窓には雨が打ち付けて、室内にはその音だけが静に響く。
「……気のせいか」
小さく息を吐いて視線を棚へと戻すと、もう一度、目的の本へと手を伸ばした。
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