Many happy returns of the day.
せっかくの旅行先。その後もすぐに寝る筈はなく。日本酒を飲みながら、お互いほろ酔い加減になって。気付けば結構いい時間になっていた。
「そろそろ寝るか?」
「ん?あー、うん。そやな」
言われて時計を眺めて。服部がお猪口に残る酒を飲み干す。
「じゃ、こっち電気消すぞ」
「ええで」
空になったお猪口を置き。布団の敷いてある部屋側に服部が移動するのを見送って、電気のコードを引いた。
「あ。意外と見える」
本館側のライトがあるせいか。電気を消しても、部屋の様子が分かるぐらいには光がある。
同じく、布団のある方へと移動すると。探し物をするには暗い中、鞄を漁っている服部が見えて。
「何してんだよ」
後ろで両膝をついて、その背中を抱き締めたら。慌ててその腕を解こうともがくから、ちょっとだけ抱き締める腕の力を強めた。
「わ、ちょっ、離せや。腕動かされへん」
「もう寝るだけだっつーのに。暗くなってから何探してんだよ。ゴムか?」
「アホ、違う!」
「じゃ、何だよ」
「あー、もう。ええから離せ!」
何を探しているか分からないが、どうしても今それを見つけたいらしく。結構な力でオレの腕を解くと、またごそごそと鞄を漁りはじめて。
「あ、あった」
言って振り向いた顔が、何だかとても嬉しそうだった。
[ 64/289 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]