Many happy returns of the day.

 そんな服部のバイト生活は、桜が散る頃には終って。その後、特に帰りが遅くなるとか、知らない誰かと会ってるだとか。そんな事は無く過ぎていく毎日。
 取り敢えず、他に女が出来たとか、男が出来たとか。色恋の類ではなかったらしい。その証拠に。

「もうすぐ連休や連休。何する?どこ行こか?」

 言いながら。学校の帰りに貰って来た旅行のパンフレットを広げたり、携帯で付近のイベント情報眺めたり。実に楽しそうに、オレとの連休プランを立てている。
 まず他に好きなヤツが居るんだとしたら、ゴールデンウィーク中の休み全部、オレと一緒には居ようとしないだろう。
 良かった。本当に良かった。

「……て、なあ。工藤、聞いてる?」

 安堵に浸っていたオレを、現実に呼び戻す声の主。覗き込む顔がやたらと近くにあって、思わず心臓が止まりかかった。
 昔からだが、コイツは人を覗き込む時の顔が近い。自分がされるのもだけど、他にもしてたらどうしようとか思うと、これは実に心臓によろしくない。から、是非やめていただきたい。

「聞いてるよ。つーか、ゴールデンウィークはどこも混んでるだろ。別に無理してどっか行かなくても……」
「えー。せっかくの連休なのに?こないだ買うたカメラもあるのに?」

 不満そうに返して、背後の棚の引き出しを開けると。中から自分のデジカメを取り出す。

「普段あんま使てへんし、旅行やったら丁度ええなーって思っとったのになぁ」

 電源を入れて映される画面には、オレの寝顔とか、飯食ってるオレとか、いつ撮ったんだよってオレとか。とにかくオレが色々。中には、たまに意味が分からないモノの写真もある。
 普段あまり使ってないと言う割には、結構数がある気がするけど。まあ、オレのカメラの写真の数には確かに敵わない。

「そんなどっか行きてーのかよ」
「うん。カメラ使えるし。それに、工藤に楽しんでもらいたいし」
「何?」

 カメラ使えるし、それに、の後の言葉が非常に小さくて。残念ながら、オレには聞き取ることが出来なかった。けれど、元々聞かせるために言った言葉ではないのか。服部は、オレの反応には何も言わないで。ただ、曖昧な笑みだけを返す。

「な。どっか行こう?何がしたい?」

 向けられた瞳が、なんだか凄く優しかった。

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