Many happy returns of the day.
服部の家は洋風一色なうちとは真逆で和風一色。両親も、破天荒で自由奔放なうちの両親と 違って恐ろしく古風だ。まあ、どちらの親も親馬鹿なのは一緒なんだけど。
育った場所も、東京と大阪。とにかく、色んなモノが違う環境、離れた場所で育った二人。そんな二人が出逢って、仲良くなって、オマケに恋をして。今じゃ一緒に住んでるんだから、ホント人生って、いつ何があるか分からない。
「……おせえな……」
何度見たか分からない時計。さっき見た時から、実際5分も進んでない。現在時刻23時17分。夜中と呼んでいい時間。
「アイツのバイト、終るのこんな遅かったっけ?」
ラップをかけて、テーブルに綺麗に並べられたままの、食べてていいと言われた夕食。眺めて吐く、こちらも何度目か分からないため息。
待ってる時間ってのは、いつでもホントに長い。
実際。工藤家には劣るにしても、過保護な服部家の仕送りは結構な額で。バイトなんかしなくても、服部は余裕で学生生活を送れる。それが。
「オレ、明日からバイトするから」
「は?」
なんて。飯を食いながら突然言ったのが3ヶ月程前。
「何でいきなりバイト?しなくても生活に困ってねーじゃん」
「欲しいモンがあんねん。けど、生活費から出すには値ぇがはるから、バイトして稼いで買おう思って」
ブランド物には興味が無い。食い物も安くて美味いものが好き。金をかけてるとしたらバイクぐらい。そんなヤツが買う高いもの。
……新しいバイクでも買うつもりか?
オレの車もあんのに?
数々の疑問文が頭に浮かぶ。
バイクにしたって、買い換えなきゃならない状態では全く無いし、本気で使い道が分からない。まさか、他に好きな誰かが出来て貢ぐ為……?
なんて事はないよな、なんて。心配してる人の気を知ってか知らずか。
「何だよ、んな高い欲しいモンって」
訊いてみたら。
「工藤が興味無いモン」
「あぁ?」
教える気が無いのが丸分かりな態度を取られて、思わずプチンと来た。
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