Happy for you. 4.ふたり。
「昨日の話。工藤が真剣にオレと向き合う言うなら、オレも真剣に向き合うたる」
寝屋川の駅までの道。
並んで歩きながら、平次が前を見たままに言う。
「オレは正直、嫌われてへんのやったら、今のまんまの付き合いでええのとちゃうか?て思うけど。工藤が今以上を望むなら、それはそれで状況にもよるけど付き合うし、それはオレの意思で付き合うんであって、嫌々とかそんなんと違うから安心せえや」
「……なげーけど。つまり、付き合うって事だな?」
「うん」
真剣なお付き合いの証明は、一緒に寝てみたら分かる。
新一が昨晩言ったその内容は、今朝起きた時に理解できた。
だから、真剣なお付き合いと言うものも、してみてもいいかな、と平次は思った。
「じゃ、今からオレ達、恋人同士なワケだ」
「せやな」
普段、こう言う事にはすぐ照れる平次だが。
今のところ、照れている様子は全くない。
なんだか、いつもの平次と違ってるみたいで、新一は調子が狂うような気がした。
だから、平次の横顔を覗き込むように見ると。
「手でも繋ぐか」
言ってみたら。
「この場でしばき倒されてもええのやったら繋げや」
にっこりと、顔は笑顔でそんな言葉を返されて。
「うん、やめとく」
ああ、やっぱ服部だ。
思ってちょっと安心していた。
君に幸せをあげよう。
ただひたむきに。
真っ直ぐに。
「次の連休は、今度はオレがそっち遊びに行くな」
「ああ。待ってる」
君がくれる分だけ。
君がくれた分以上に。
「美味いモンとか、色々用意しといてや」
「あー?……分かった。色々用意しといてやるよ。色々」
「はぁ?」
僕が君にとっての幸せになるように。
君が、幸せそのものであるように。
「……まぁ、気分がノったら付き合うたるわ。上手い事ノせてみ」
「え」
閉まるドア。
照れて、逸らされている細められた瞳。
ドアの窓を叩くと、こちらに戻された視線。
一瞬の真顔の後。
走り出した新幹線に流されてゆく、手を振る幸せ者の笑顔。
「無くてもいいとか言って。人の事変態とか言えねーだろ」
流れる景色を背に。
幸せ者の笑顔が、ここにもまた一つ……――。
幸せになろう。
二人で一つの幸せに。
END.
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