Happy for you. 3.和葉と新一。
和葉の話していた内容をまとめると。
新一が大阪から帰った日以来、平次の様子がおかしくなった。
とにかく元気がなくて、勉強も部活動も全く身が入っていない。
常に上の空で、心ここにあらず。
そんな状況が続いていて、クラスメイトや、平次の両親ですら、病気ではないかと心配になるほど。
その原因は新一。
平次は新一の事が好きで。
それを自覚させる為に、和葉が動いて。
そんな和葉の想いをミスリードした新一は、平次を思い切り傷付けてしまった。
和葉が考えていたハッピーエンドは、新一が考えたそれとは全然違う。
だがそれには、新一も平次を好きでなくてはならない。
ミスリードが無くとも、成立する可能性は非常に低かった筈だが、和葉の中では絶対に成立する自信があった。
何でだ?
新一の頭に、服部の普段の笑顔が浮かぶ。
「オレが服部を好き?」
真実から目を逸らしたら探偵失格。
和葉の言った真実とは、何を指しているのか。
「服部の気持ちの事か?それとも……――」
新一の事か。
「あー、もう!わかんねー!!」
くしゃくしゃ、と。
両手で自分の髪を掻き毟るみたいに混ぜて。
「確かにっ。確かに、あん時一瞬だけ、よくわかんねー気分になったけど!だけどアレは、状況が状況だったから……って、あー、もう!」
髪を混ぜた手のまま、両手で頭を掴んだままブツブツと呟き。
また、髪を掴んだままにぐしぐしと両手で頭を擦る。
あんな事になる前。
『オレだけが知っとる場所があんねん。咲いたら連れてったるから。絶対こっち来いや。約束したで』
平次が満開の笑顔で新一に言った言葉。
交わされた指きり。
ふと、そんなシーンが鮮やかに蘇った。
「……約束、か」
ぐしゃぐしゃの頭のまま、窓の外へゆっくりと視線を移す。
早咲きだった東京の桜は散ってしまった。
だが、関西方面は……――。
勢い良く立ち上がると、急いでリビングを抜け、階段を駆け上がった。
部屋の中、必要なものだけをポケットに突っ込んでまた階段を下る。
「確かめてやるよ、その真実ってヤツを!」
玄関の扉を開くと。
眩し過ぎる太陽の光が、包み込むように新一の体を照らした 。
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