Happy for you. 2.工藤編。

 今年最初のおみくじは大吉だった。





「オレがな……お前をな……好きなんとちゃうか……って」

 すっげぇ小さい声だった。
 だけどしっかり聞こえてて。
 思ってもないセリフだったのと、その場の空気に呑まれたってのもあって。
 不覚にもひどく赤くなったし。
 頭の中が真っ白になったし。
 うまい返しが浮かばなくて。
 その後の服部の言葉は殆ど聞いてなかった。

 けど。
 その後、服部が風呂に入ってる間中考えてたら。

「……つまり……たぶんあれだよな。遠山さんにはめられた……?」

 あの後の服部の慌てぶりとか、その後の服部の様子とか。
 全てひっくるめて、冷静に考えればそうとしか思えない。
 服部は別にオレをそう言う意味で好きな訳じゃなくて。
 アイツの言うところの親友として好きで、そう接してるんだろうけど。
 それが、彼女にはヤキモチの種になった。

 そう言う事?

「まぁ……彼女の気持ちも分からなくはない……」

 服部の常々の行動を思い出せば、乾いた笑いしか出ないような事もままある訳で。
 そりゃ最初はオレが女だと思われてたのも分かるっつーかなんつーか。

「しょーがねー奴だな、っとに……」

 呟き、息を吐いて。
 ぽりぽりと頬を指先で掻きながら考えてみる。
 自分がこの後、どう行動すべきか。

「……男のオレがそれってのも……なんか違う気がすっけど……」

 服部に自分がどんな行動をしているかを気付かせて、自分が誰を本当は好きなのかを自覚させりゃいい。
 つまり、オレが演じるべきは……――。

 普通は女の子が演る役じゃね?
 オレがその役とかおかしくね?

「……ったく……何でこんな事に……」

 取り敢えず、自分にも原因はあるのかも知れないと腹は括ったものの。
 その後、自分がとるべき諸々な行動を考えてみたら。
 それは盛大な溜息しか出なくて。

 そもそもの原因を作った服部と、そいつを好きになった遠山さんを激しく呪った。 

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