Happy for you. 1.服部編。

 おみくじをひいたら、大凶やった。




「……だから、オレの顔に何かついてんのか?」

 少し睨むみたいな視線と低い声。
 不機嫌なのは見て取れる、その様子に。
 はっと我に返って。

「あ……いや、すまん。ぼけっとしとった」

 知らず、ずっと工藤の顔を見続けていた事に気付いた。
 時すでに遅し。

「お前、昨日からそればっかだな。何なんだよ、一体」

 顔を近付けて覗き込まれて。
 咄嗟に赤くなるのを止められず。

 ……あかん。
 絶対変やと思われた。

「……服部?」

 くるり背を向けて。
 今度は蒼白であろう自分の顔を両手で包むと。
 こめかみから流れる、冷たい汗が指に触れる。

「お前……ホントにどうした?」

 そんなんオレが知りたいわ。
 思って泣きたくなって。

 そもそもの原因を作った、和葉を呪った。





「……は?」

 携帯でメールを返していると。
 とんでもない事を言われたのが聞こえて。
 思わず、そのまま携帯を落っことしそうになった。

「あんた、自分で気ぃついてへんの?ほんま、どこまで鈍感やねん」

 やれやれと大袈裟に息を吐きながら。
 和葉が肩を竦めて見せる。

「いやいや……ちょ、待てや。なんでそーな……――」
「工藤君にメール打ってる時の自分の顔。鏡でよー見てみ。少女漫画の主人公も吃驚するわ」

 言って、呆れの見える視線を向けられたら。
 なんでか、言い返したい言葉も出てけえへんし。
 それ以前に、頭が混乱しとって真っ白や。

「うちでもそないな顔してメール返してるんとちゃうやんな?おばちゃんにバレんで。気ぃつけや」
「……いや、せやから……バレるもなんも……」

 さっき、和葉になんて言われたんやった?
 なんで、こないに動揺してんねん?
 なんで……――。

「あー、もう。工藤君に負けたとか……ほんまショックやわ。ま、頑張って。もー、あたし知らん」
「え。ちょ、和葉……っ」

 ひらひらと片手を舞わせて去ってゆく。
 追っ掛けて来んな言われてる気ぃして、追っ掛けかけた足を止めて。
 一人残された教室。
 何も考えられんようになったオレの手の中で。
 工藤からのメールを受信した、携帯だけが震えてた。

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